2011/5/4

CIS諸国

ウクライナも原子力維持=ヤヌコヴィッチ大統領

この記事の要約

ウクライナのヤヌコヴィッチ大統領は、チェルノブイリ原発事故25周年を機に行われたドイツ版『ファイナンシャル・タイムズ』紙とのインタビューで、今後も原子力発電を維持する方針を明確にした。同国は技術的にも、財政的にも原発を廃 […]

ウクライナのヤヌコヴィッチ大統領は、チェルノブイリ原発事故25周年を機に行われたドイツ版『ファイナンシャル・タイムズ』紙とのインタビューで、今後も原子力発電を維持する方針を明確にした。同国は技術的にも、財政的にも原発を廃止できる状況になく、政府としては経済改革の推進など、再生可能エネルギーの拡充よりも先に取り組むべき課題が存在すると理由を説明している。

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ウクライナでは4原発で合計15基の原子炉が稼動している。電力需要の51%を原発に頼っており、今後も最大9基を新設する計画だ。国民も原発維持が多数派を占める。ヤヌコヴィッチ大統領は、史上最悪のチェルノブイリ原発事故の経験から、世界最高の安全水準を保証するのが政府の務めと話す。

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チェルノブイリ原発事故でウクライナでは540万ヘクタールの土壌が放射能に汚染された。また、国内の被害者数は220万人とされる。19日の国際会議では、米欧などの政府、国際機関が新たなシェルターの建設費として5億5,000万ユーロの資金拠出を約束した。

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ヤヌコヴィッチ大統領は自らを「東西を問わず、協力パートナーを探す現実主義者」と評価する。法制・行政改革で投資環境は大きく改善しており、投資はどこの国からでも歓迎するとアピールした。

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外交では、欧州連合(EU)と自由貿易協定(FTA)の締結に向けて交渉を進める一方で、ロシア、カザフスタン、ベラルーシで構成する関税同盟への加盟を検討中。双方との交渉を同時に進めることでウクライナの利益最大化を狙う。このため、年内のFTA締結の見通しについてコメントを避け、関税同盟についても、加盟3カ国との友好関係を深めるのが主眼と一定の距離を置いている。

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ロシアとはまた、ガス調達価格の引き下げで交渉している。大統領選挙資金の提供を受けたエネルギー集約型産業の利益を代表するものだ。また、国際通貨基金(IMF)からの融資条件となっている緊縮財政や年金改革、エネルギー料金引き上げなどでは主に低・中所得層に負担を求め、富裕層の財産には手を触れていない。この問題について大統領は「誰もが国の近代化に貢献しなければ」としながらも、しばしの沈黙の後で「金持ちから金を取れというのですか?」とコメント。富裕層の負担増を考慮に入れていないことがうかがわれた。

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