昨年のロシアにおける買収・合併(M&A)取引の規模は956億米ドルとなり、前年の488億ドルから約2倍に拡大した。一方で、数件の大型案件を除くと国外からの投資はごくわずかで、依然として国内企業間の取引が圧倒的多数を占めている。大手会計事務所のKPMGが3月に発表したロシアのM&Aに関する最新リポートで明らかになった。
\大型案件が取引総額の多くを占める構造は変わっていない。2010年は、◇ビンペルコムによるイタリアとエジプトの競合買収◇ルクオイルによるコノコフィリップスからの自社株買い戻し◇ウラルカリによるシルヴィニトの合併――の3件で、全体のおよそ3分の1を占めた。
\取引額が産業別M&A取引総額の15%を超える案件を除くと、ロシアのM&A市場は国内企業間取引が圧倒的なシェアを握る。これらの国内取引の規模は2010年に49%拡大した。また、産業別では依然として石油・ガス、金属・鉱山、流通、農業が重点となっている。
\投資の傾向をみると、戦略投資家による取引が多い。金属・鉱山業や通信サービス産業では販売や物流、原料調達といった業務で他社を買収する垂直統合が進む。また、石油・ガス産業では将来の大企業を形成する市場再編の動きが顕著だ。
\2010年のM&A規模は前年比で大幅に拡大したものの、危機前の最高記録である2007年の1,594億ドルを大きく下回っている。また、世界のM&A市場に占めるロシアの比率も3.85%と2008年の4.96%より低い水準だ。
\KPMGでは今年から来年にかけてM&A取引がさらに活発化すると予想する。国外投資家によるロシアの投資と同時に、ロシア企業の国外投資も増加する見通しだ。
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