2011/5/11

総合・マクロ

中東欧の原発プロジェクトに遅れ、福島事故も影響

この記事の要約

中東欧諸国の原子力発電所プロジェクトに遅れが出ている。スロバキアでは福島第1原発の事故の影響で建設計画が遅れる見通し。ルーマニアでも相次ぐ投資家の撤退で拡張プロジェクトの推進が難しくなってきた。\ スロバキア原子力規制庁 […]

中東欧諸国の原子力発電所プロジェクトに遅れが出ている。スロバキアでは福島第1原発の事故の影響で建設計画が遅れる見通し。ルーマニアでも相次ぐ投資家の撤退で拡張プロジェクトの推進が難しくなってきた。

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スロバキア原子力規制庁のZiakova長官が3日明らかにしたところによると、チェコ電力最大手CEZが同国で計画している原発建設計画が先送りされる可能性が高くなった。福島原発の事故を受け、欧州連合(EU)が原発の安全基準を強化する方針を打ち出したことで、事業化調査に当初計画より時間がかかる見通しとなったため。

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CEZは2009年にスロバキアの原発企業Jadrova a vyradovacia spolocnost(JAVYS)と合弁で同国西部のヤスロフスケ・ボフニツェに原発を建設することで合意。当初の計画では事業化調査を今年半ばに完了し、2014年から建設に着手、20年に完成することになっていた。Ziakova長官は記者団に対し、「事業化調査は少なくとも1年以上ずれ込み、環境影響評価には2~3年を要する」と語り、新原発が稼動するのは25年以降になるとの見方を示した。

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スロバキアは電力消費の55%を原発で賄っている。 同国最大の電力会社であるスロベンスケ・エレクタルネ(SE)は、西部モホフツェで12~13年に原子炉2基の稼動を開始する予定だ。

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また、ルーマニア・チェルナボダ原発の拡張プロジェクトを進めるEnergoNuclearは5日、3、4号炉の建設を2019年まで延期することを決めた。相次ぐ投資家の撤退で資金計画が立たなくなったため。同社は新たな投資家を探している。

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チェルナボダ原発はルーマニア南東部のドナウ川沿いに位置する。現在稼働する2基(出力各650メガワット)は国内電力需要のおよそ18%をまかなう。政府は原子力エネルギー利用を維持する方針を確認している。

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建設が計画される3、4号炉はそれぞれ出力720メガワットで、当初2015~16年の完成が見込まれていた。しかし、福島原発事故以前から、戦略的理由による投資家の撤退が相次いでいた。すでにドイツのRWE、チェコのCEZ、スペインのイベルドローラ、フランスのGDFスエズが撤退を決めた。ルーマニア政府を除く投資家は、イタリアのエネルと世界最大の鉄鋼会社アルセロール・ミタルの2社だけとなっている。

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■ 原発支持率も減少

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世論調査機関WIN ギャラップ・ インターナショナルが福島原発事故後の3月21~4月10日に世界47カ国で実施した調査によると、ほぼすべて国で原発支持率が事故以前より減少した。中東欧諸国では、原発国で新設も計画しているブルガリアとチェコで支持率がそれぞれ62%、61%と依然として過半数を超えたものの、同じく原発を持つルーマニアでは事故前の51%から41%に減少した。2020年に国内初の原発の稼働を計画しているポーランドの原発支持率も30%と低かった。また、東芝と東京電力が原発新設の受注を見込んでいたトルコでも原発を支持率は41%で過半数に満たなかった。

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西欧では原発大国フランスで、支持率が事故前の66%から58%に下落。反原発国のオーストリアとドイツではそれぞれ90%、72%が原発に反対すると回答した。

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原発支持率が最も高かった国は70%の中国。ただ、事故前の83%からは大幅に減少した。韓国の支持率は64%で、減少幅は1ポイントと低かった。当事国である日本の原発支持率は39%。事故前の62%から急落し、過半数を下回った。

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