2011/5/11

総合・マクロ

ナブッコ・パイプライン計画に遅れ、調達先の確保困難で

この記事の要約

欧州連合(EU)支援するナブッコ・ガスパイプライン計画に遅れが生じている。プロジェクト推進会社のミチェク社長は6日、供給候補国との交渉が長引いていることを理由に、着工を計画から1年遅れの2013年に延期すると発表した。稼 […]

欧州連合(EU)支援するナブッコ・ガスパイプライン計画に遅れが生じている。プロジェクト推進会社のミチェク社長は6日、供給候補国との交渉が長引いていることを理由に、着工を計画から1年遅れの2013年に延期すると発表した。稼働も予定の15年から2017年にずれ込む。ナブッコ計画には競合プロジェクトが存在し、迅速に実行できるかどうかが成功を左右するとみられている。今回の遅れで採算の確保がさらに難しくなりそうだ。

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ナブッコ計画は、カスピ海産の天然ガスを、ロシアを迂回して欧州に運ぶことを目的としている。ただ、政治的理由により、供給候補国の一つであるイランからの調達が不可能になったほか、トルクメニスタン、アゼルバイジャン、イラクとの交渉も長引いており、供給先の確保が進んでいない。また、ロシアが対抗して進めるサウス・ストリーム計画は、夏に事業計画が完成するところまで進行しており、専門家はサウス・ストリームが先に稼働すればナブッコは採算がとれないとみている。

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調達先ではアゼルバイジャンが今年1月、開発中のシャフ・デニズ第2鉱区から年間100億立方メートルを供給することを約束した。しかし、同鉱区におけるガス生産は早くて2017年からと見込まれている。オーストリアAPA通信によると、ナブッコ・パイプラインの重要経由国であるトルコと、アゼルバイジャンとの間のガス輸送料金交渉も6カ月延期され、これが日程変更のきっかけになったもようだ。ナブッコ・パイプラインの稼働には80~120億立方メートルの輸送量が必要で、従来の日程では確保が難しくなっていた。

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■コスト倍増報道を否定

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投資総額が最大2倍に膨らむとの報道に対し、ミチェク社長は「憶測に過ぎない」としてこれを否定した。ただ、ガス供給国とトルコを結ぶパイプライン敷設ルート変更を受けて現在、経費を計算しなおしている事実は認めた。総延長は従来計画より20%長い3,900キロとなるが、コストがその分拡大するとは限らないと説明している。予算の見直しが済んだ時点で数字を公表する予定だ。

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ロイター通信は5日、トルコの関係筋の情報として、ナブッコ計画のプロジェクト総額が計画の79億ユーロから120~150億ユーロに増加する見通しと報じた。ミチェク社長は、トルコが6月に総選挙を控えている事実を指摘し、ナブッコ計画に反対する陣営が情報を流した可能性があるとコメントしている。

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