2011/9/21

ハンガリー

ハンガリー、外貨建て債務の一括返済に割引レートを適用

この記事の要約

ハンガリー議会は19日、外貨建て融資に関する法律案を賛成277、反対9、保留30で可決した。フォリント安で返済負担が急増した個人を救済する目的で、残金の一括返済を条件に割安な固定換算レートを適用する。為替差損の負担を求め […]

ハンガリー議会は19日、外貨建て融資に関する法律案を賛成277、反対9、保留30で可決した。フォリント安で返済負担が急増した個人を救済する目的で、残金の一括返済を条件に割安な固定換算レートを適用する。為替差損の負担を求められる金融業界は猛反発している。また、大手銀行がハンガリーに進出しているオーストリアも政府が強く抗議している。

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同法はオルバン首相が12日発表した「ハンガリーを守る行動計画」の柱の一つ。同国では低金利にひかれて、過去に約110万人がスイスフランやユーロなどの外貨建てで住宅資金を借り入れた。しかし、2008年以来のフォリント安でその負担は急激に増大している。

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新法は、残金の一括返済を条件に、換算レートを1フラン=180フォリント(20日現在の実勢241フォリント)、1ユーロ=250フォリント(同291フォリント)に固定し、為替差損を銀行に負担させる内容だ。諸手数料も銀行に負担を求める。これにより、フォリント建てでの借り換えを推進する狙い。

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適用を受けるには12月30日までに一括返済を銀行に申し出ればよい。銀行は60日以内に解除手続きを完了させなければならないが、フォリント建ての借り換えに応じる義務はない。

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オーストリア政府はハンガリー政府に対し、同法が融資契約の「強制両替」であり、中東欧だけでなく欧州全体の金融市場の安定性を揺るがすと書面で抗議。欧州委員会に対しては欧州司法裁判所に差し止めの仮処分を申請するよう求めるなど、強硬姿勢を明確にしている。その背景には、同国のライフアイゼン・バンクとエルステの大手2行が同国で総額60億ユーロの外貨建て融資を行った事実がある。ただ、実際に返済する人の数は15~45万人と推定に差があり、現時点では銀行の負担を算定するのは難しい。

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欧州連合(EU)はハンガリー政府の方針に唖然としつつ、「欧州法に抵触しないか審査する」姿勢を明らかにした。

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国内でも批判の声があがっている。ハンガリー経済研究所(GKI)は、民法に基づく契約を国が書き換えるものと指摘。法治国家では許されない無責任な行為であり、投資家のハンガリーに対する信頼をさらに低下させかねないと懸念を強めている。

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当事者であるハンガリー銀行業界団体は首相の計画を拒否する姿勢で、憲法訴訟も辞さない構えだ。

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■借入コスト制限なども計画

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「行動計画」に盛り込まれたその他の措置には、◇法外な金利を取り締まる政策の一環として、住宅ローンの借入コストを最大30%に制限◇公共料金の規制をこれまでの電力から上下水道、ごみ処理サービスに広げる◇ぜいたく品の付加価値税率を35%に引き上げ◇農業分野における「負の所得税」の導入◇破産した企業のオーナーが新企業を設立するに当たり、税金未納がないことを条件とする◇長期失業者に農業、エネルギー分野および大型公共プロジェクトにおける労務提供を義務付ける「雇用創出計画」が成果をあげた場合、同計画の規模を大幅に拡大する――などがある。

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