2011/10/26

ロシア

ロシアの希土類生産本格化、早くて10年後に

この記事の要約

中国の輸出制限で価格が高騰しているレアアース(希土類)だが、世界第3位の埋蔵量が見込まれているロシアでの生産が本格化するには10年以上を要する見通しだ。鉱床開発が、ほぼ手付かずであることが理由。出遅れているロシアの生産を […]

中国の輸出制限で価格が高騰しているレアアース(希土類)だが、世界第3位の埋蔵量が見込まれているロシアでの生産が本格化するには10年以上を要する見通しだ。鉱床開発が、ほぼ手付かずであることが理由。出遅れているロシアの生産を軌道に乗せるには、需要家である国外の先端技術メーカーとの提携が必至となりそうだ。

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米国の調査会社、テクノロジー・メタルズ・リサーチのリフトン氏は、「今からプロジェクトをスタートさせれば、2020年に生産が開始できるだろう」と話す。ただ、アーネスト&ヤングのネストゥール金属鉱山部長によると、軽希土類は2013年、重希土類も16~17年頃には不足が解消すると予測され、採算を確保するには需要家を提携パートナーとして獲得することが必要になる。

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提携先としては、永久磁石メーカーや風力発電会社、自動車産業が有望だ。合金メーカー、軍事・原子力産業なども可能性がある。磁気冷凍室の実用化などで、新たな需要も生まれるだろう。

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ただ、国内の主要鉱床であるトムトル鉱床の開発コストは膨大になりそうだ。詳細はまだ明らかになっていないが、分離精製設備だけでも1~3億米ドルに上る見通し。冬の気温がマイナス50度に下がる環境で操業を可能にするため、インフラ整備に巨額の資金を投じる必要もある。

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■開発は手つかず

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ロシアはレアアース埋蔵量で世界3位と言われるが、鉱区のほとんどが開発されていない。ノリリスク・ニッケルなど鉱山大手が副産物として生産する分を除くと、ムルマンスクのロヴォゼロ鉱区にあるソ連時代の採掘設備が稼動しているだけだ。

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ロヴォゼロ鉱山では、ランタナム、セリウムなどを含むロパライトが採れる。今年の採掘量は昨年より1,000トン多い1万2,000トンとなる見通しだ。ロパライトはウラル地方のソリカムスク・マグネシウム工場で処理され、希土類酸化物として輸出される。昨年は米モリコープ子会社のエストニア・シルメト工場と、カザフスタンのウルバ冶金工場(UMP)に1,466トンを供給した。

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国内の埋蔵量については専門家の間でも見解に差がある。国内の地質学者が世界全体の30%とみる一方で、米国地質調査所(USGS)はロシア及び旧ソ連の隣国を合わせて14%程度と推測している。トムトル鉱床については、ロシア科学アカデミー地質鉱物岩石地球化学研究所(IGEM RAS)のサモロフ氏が、「セリウムとサマリウムなど軽希土類を12%含有する鉱石が1億5,000万トン存在する」との推定を発表済みだ。

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レアアース市場の95%を握る中国は、過去2年間にわたり、輸出量を約40%カットした。このため、価格が高騰している。一例を挙げると、軽希土類に分類されるランタンのスポット価格は1999年にキロ当たり0.85ドルだったのが2010年には35ドルとなり、現在は130~140ドルで推移している。

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このため、ロシアのレアアースに対する国外の関心も高まってきた。7月にドイツを訪れたメドベージェフ大統領は、現地企業の積極的なアプローチを受けて、ロシアがドイツの主要なレアアース供給国になる可能性に触れた。住友商事とカザフスタンの原子力公社カズアトムプロムとの合弁会社SARECOも、サハ共和国での開発プロジェクトを検討中だ。

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