2011/11/30

総合・マクロ

中東欧向け融資を規制、墺中銀が方針表明

この記事の要約

オーストリア国立銀行(中央銀行)と同国の銀行監督当局(FMA)は21日、民間銀行の中東欧事業の持続性を高める一連の規制を導入する方針を明らかにした。欧州債務危機の影響が広がる中、金融機関の健全性を高め、信用格付けを防衛す […]

オーストリア国立銀行(中央銀行)と同国の銀行監督当局(FMA)は21日、民間銀行の中東欧事業の持続性を高める一連の規制を導入する方針を明らかにした。欧州債務危機の影響が広がる中、金融機関の健全性を高め、信用格付けを防衛するのが狙い。年内に具体的内容をまとめたガイドラインを発表する。

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規制の主な内容は、中東欧で業務を展開するエルステ銀行、ライフアイゼンバンク、バンク・オーストリアなどの民間銀行に対し、◇2013年から19年にかけて段階的に実施される新たな自己資本比率規制「バーゼル3」を、13年の導入直後に完全実施させる◇16年1月から中核的自己資本比率に加えて最大3%の資本保全バッファーを導入する◇銀行の現地拠点を通じた中東欧向けの新規融資額を、預金などで現地で集めた資金額の1.1倍以内に抑える◇デフォルト(債務不履行)に陥った場合の資産処理方法を定めた「リビング・ウィル」を作成する――ことを求めるというもの。

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オーストリアの銀行は歴史的に中東欧とのつながりが深い。同地域への融資残高は1,980億ユーロ(伊ウニクレディト子会社であるバンク・オーストリアは除く)にのぼり、金融市場で22%のシェアを握る。欧州債務危機の影響は非ユーロ圏の中東欧にも及んでおり、ハンガリー政府は先ごろ、自国通貨フォリントの下落により信用不安が拡大しているとして国際通貨基金(IMF)と欧州連合(EU)に支援を要請。今後他の中東欧諸国にも同様の動きが広がれば、オーストリアの銀行に対する信用に大きく響き、ひいては欧州で独仏とならび最上級となっている同国の国債格付けに悪影響を与えることが懸念されている。

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オーストリア国立銀のノボトニー総裁は一連の規制について、「持続可能な成長を可能にし、バブルとその崩壊というサイクルを回避するためのもの」であり、「金融市場を安定的させ、オーストリアの金融機関のエクスポージャーを持続可能なものにするものだ」と述べ、中東欧への既存融資の引き揚げを意味するものではないと説明している。一方、バークレイズ・キャピタルの新興市場通貨担当エコノミスト、ケラー氏は、こうした規制は「確実にクレジット・アベイラビリティに影響を与える」と指摘。さらに、銀行は融資先をより厳しく選別する傾向が強まるため、ハンガリー、ルーマニア、ウクライナ、ブルガリアといった国々に大きな圧力がかかるとの見方を示している。

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