チェコのエネルギー企業、エネルギー産業ホールディング(EPH)が、国営電力CEZが売却を予定している2つの火力発電所の獲得に乗り出した。競合のチェコ・コール(旧MUS)による買収を妨げ、発電市場での勢力拡大を狙っているもようだ。CEZは5月末ごろまでにチェコ・コールとの交渉を決着させる方針だが、EPHの「参戦」で予測が難しくなってきた。
\売却が予定されるのは、東ボヘミアのフヴァレティツェ発電所(出力800メガワット)と北西部に位置するポチェラディ発電所(出力1,000メガワット)だ。
\CEZはチェコ・コールからの長期石炭調達契約の更新を年末に控える。新しい契約の枠内で、同社に両発電所を売却する代わりに石炭の供給を受けることで同意を得たい考えだ。しかし、両社の関係は、互いに主要取引先でありながら良好とはいえない状況で、CEZは交渉決裂の可能性も視野に入れている。
\この中でEPHが7日、両発電所の買収提案を準備中と発表したことについて、チェコ経済紙『ホルポダルスケ・ノヴィニー』は、EPHが電力事業拡大に向けて獲得を狙っていた発電資産をチェコ・コールが入手することを懸念したためではないかと推測している。
\フヴァレティツェ発電所はどの採炭地からも遠く、熱源である石炭を調達することが難しい。CEZとEPHは、同発電所とEPH傘下のエネルゴトランスを交換する取引で一旦合意。その条件としてCEZが長期間、同発電所に石炭を供給することが定められた。しかし、これを履行するとCEZが自社の需要を十分にまかなえなくなる懸念があり、破談となった。
\その後、CEZはエネルゴトランスを取得する代わりに傘下の独褐炭会社MIBRAGの株式50%をEPHに売却することで交渉を進め、昨夏に契約に調印した。
\CEZのエネルゴトランス取得に関しては、独占禁止局(UOHS)が発電市場におけるCEZのシェア拡大を問題視し、審査期間を延長して精査している。このため、CEZは2発電所を手放して取引の承認を得たい考えのようだ。
\ \■中欧発電事業拡大に意欲=EPH
\EPHのダニエル・クルジェティーンスキ会長は『ホスポダルスケ・ノヴィニー』紙に対し、発電事業に50億ユーロを投資し、中欧市場で1、2を争う企業となる方針に変わりがない事実を認めた。MIBRAGの近くに出力600~800メガワットの火力発電所を建設するほか、ドイツの2発電所への資本参加、スロバキアのガス大手SPPの株式49%を取得することなどを計画する。
\独RWEが売却を予定するチェコのガスパイプライン運営会社Net4Gasの取得にも関心を示している。
\EPHはチェコの投資会社であるPPFとJ&Tが各40%を出資し、残る20%をクルジェティーンスキ会長が保有する。(東欧経済ニュース2011年8月3日号「チェコ電力大手CEZ、独褐炭会社の持ち株を放出」、同年6月22日号「チェコ国営電力、黒字の関連会社を競合に売却か」を参照)
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