ルーマニア議会は6日、トライアン・バセスク大統領が職権を乱用したとして、職務停止を賛成多数で決定した。今月29日に両院の決定の是非を問う国民投票を実施し、過半数が賛成すれば同大統領は罷免される。EUの欧州委員会は、今回の手続きが欧州民主主義の要である司法国家、民主的監視、司法の独立を侵す可能性を指摘し、懸念を表明した。
\与党・社会自由連合(USL)は先月末、憲法裁判所の権限を縮小する決定を下した。欧州首脳会議に誰が出席するかをめぐるポンタ首相とバセスク大統領の対立で、バセスク大統領に国の代表権があるとした憲法裁判所の判断が恣意的だったと理由付けている。さらに、3日には立法内容を監視するオンブズマンと両院議長を更迭し、ポンタ首相に近い人物をその地位に据えた。上院議長は暫定的に大統領の職務を果たす。
\バローゾ欧州委員長は12日にポンタ首相と会見し、是正を求めるもようだ。ルーマニアのEU加盟5年を機に同国の司法改革を評価する報告書が今月中に発表されることを念頭に、首相へ圧力をかけるとみられる。EUによる制裁の可能性としては具体的に(1)汚職を理由に構造基金からの助成削減(2)加盟国によるルーマニアのシェンゲン協定加盟拒否(3)欧州条約7条に基づき、非民主国家としてルーマニアの議決権はく奪――がある。(3)は政治的観点から実現は難しい。
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