2012/7/4

コーヒーブレイク

「王国」批判で懲役も~ハンガリー

この記事の要約

ハンガリーでは来年7月から、国の象徴の冒とくに対し、最長1年の懲役刑が科せられる。同国議会が25日、刑法改正の一環として極右政党のヨッビク(Jobbik)の提案に基づき可決した。国家の象徴として国旗、国歌、国の紋章となら […]

ハンガリーでは来年7月から、国の象徴の冒とくに対し、最長1年の懲役刑が科せられる。同国議会が25日、刑法改正の一環として極右政党のヨッビク(Jobbik)の提案に基づき可決した。国家の象徴として国旗、国歌、国の紋章とならび、ハンガリー王国の象徴である「聖冠」が挙げられ、オルバン政権のナショナリズムが復古的な方向性を持ちかねないとの懸念が浮上している。

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「聖冠」は1000年頃にイシュトヴァーン初代国王がローマ教皇による戴冠を受けて成立したハンガリー王国の象徴だ。王としての権力は「聖冠」が保証するものであり、「聖冠」による戴冠を受けなかった者は正式な王として認められなかった。

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国の象徴の冒とくはドイツやオーストリア、スイスなどでも処罰の対象となっている。ただ、◇「聖冠」が近代国家としてのハンガリーの象徴ではない◇1920~44年に執政としてハンガリー王国を統治し、旧領土の復活に向けてナチス・ドイツと提携したホルティ将軍を賛美する傾向が強まっている◇反ユダヤ的・国粋主義的な作家の作品が学校での必読図書に再び選定される――などの動きがあり、「大ハンガリー」の再建を求める極右の勢力が拡大する懸念がある。

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オルバン首相は初めて首相に就任した2000年に「聖冠」の展示場所を国立博物館から国会議事堂に移した。また、昨年末に可決された新しい憲法では「聖冠」を「憲法に基づいたハンガリー国家の継続性」を体現するものと位置づけた。「聖冠」がカルパチア山脈に囲まれたパンノニア平原におけるハンガリーの政治的・文化的な支配権を象徴するものであることを考慮すると、現在のハンガリー共和国の象徴にふさわしいかという議論が出てくるのも当然だ。

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新しい刑法は、このような議論を封じる狙いがあるとみられ、民主主義を弱体化させる一連の動きが歩みを止めていないことを示している。

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