ウクライナにおけるサッカー欧州選手権(ユーロ2012)の経済効果は期待はずれに終わったもようだ。企業コンサルティング会社を経営し、6年前からウクライナでも事業を展開するドイツ人、ヘニガー氏によると、大会開催の前後でドイツ企業の進出数は変わっていない。まん延する汚職と司法制度の不備、官僚主義、税制の不透明さなどが投資の障害となっているという。
\ティモシェンコ前首相をめぐって同国の内政のあり方が批判され、欧州連合(EU)との外交関係も冷却化したことで、欧州選手権のイメージアップ効果も薄かった。この問題ではEUとの自由貿易協定の批准手続きが遅れるという経済的影響も出ている。
\また、欧州選手権関連の投資がウクライナ財政悪化に拍車をかける恐れもある。全投資の80%が政府によるインフラ整備投資で、長期的には国益につながるのは確かだが、短期的には財政の負担を増加させた。上半期の経済成長が微増にとどまるなかで、今春には32億ユーロの社会予算増額が決まるなど、財政支出は急速に増加している。
\主要産業である石炭・鉄鋼産業も世界市場における価格低下で頼りにならず、政府は紙幣増刷で急場をしのぐとの憶測も浮上している。非政府系シンクタンク、ラズムコフ研究所のロゼンコ氏は、「今年11~12月に急速な価格上昇が起きる可能性が濃厚」とみる。
\これは10月末に議会選が実施されることが根拠となっている。ヤヌコビッチ大統領の支持基盤である地域党の人気は低下しており、選挙が終わるまではインフレ拡大やガス料金上昇といった事態を何としてでも避けると予想されるためだ。
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