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2012/8/8

ルーマニア・ブルガリア・その他南東欧・トルコ

セルビアで新中銀法成立、中銀を議会の監視下に

この記事の要約

セルビア議会は4日、中央銀行に対する政府の影響力を強化する中銀法案を賛成131票、反対39票で可決した。中銀総裁を議会の監視下に置く内容で、欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)、世界銀行などが中銀の独立性を侵すものと […]

セルビア議会は4日、中央銀行に対する政府の影響力を強化する中銀法案を賛成131票、反対39票で可決した。中銀総裁を議会の監視下に置く内容で、欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)、世界銀行などが中銀の独立性を侵すものとして強く批判している。

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先月発足した中道右派政権は、財政赤字と国家債務の拡大による財政の穴を埋めるために中銀の外貨準備を取り崩す意向で、今回の法改正はこれが目的とみられている。新しい総裁には連立政権を構成する右派・進歩党(SNS)のヨルゴヴァンカ・タバコヴィッチ副党首が就任する見通しだ。

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ショシュキッチ中銀総裁はすでに2日、法案の内容に抗議して辞職した。法案が成立すれば、中銀の独立性が侵されて金融市場におけるセルビアの立場が弱まるばかりか、EU加盟も遅れると警告。政府に対して採決を延期し、同法の影響をいまいちど分析することを求めたが、その声は聞き入れられなかった。ショシュキッチ総裁の任期は本来2016年までとなっていた。

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欧州委員会のフューレ拡大担当委員は採決前の時点で、「セルビアは加盟候補国であり、欧州法に適合した形で立法作業を行うべき。今回の法案が可決されれば、セルビアは大きく後退することになる」と警告した。

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IMFも、この問題が10億ユーロの融資の凍結解除に向けた交渉に大きな影響を及ぼすとの立場を明らかにしている。

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セルビアは深刻な経済後退に見舞われている。経済成長率は今年第1四半期にマイナス1.3%、第2四半期にマイナス0.6%となり、失業率は25%を超えた。インフレ率は10%と中東欧で最悪の水準となっている。

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貧困化に対する国民の不満増大を反映して、5月の議会選挙ではタディッチ元大統領の民主党(DS)の得票が減少。SNSと社会党(SPS)、セルビア統一地域党(URS)による中道右派の新政権樹立につながった。

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