ロシア政府はこのほど、喫煙規制法案を閣議決定した。飲食店を含む公共の場での喫煙を禁止するほか、広告禁止、販売店の規制、税率引き上げで、たばこ消費を抑制する。法案が成立すれば、各措置が段階的に実施され、2015年初めに完全に施行されることになる。政府によれば、たばこ産業界は法案の内容に反対し、「強力なロビー活動」を展開している。
\法案によると、遊園地、学校、大学、病院、飲食店、長距離列車、飛行機、ホテル、小売店および公共の建物内での喫煙を禁止する。
\広告は法案成立と同時に禁止する。また、包装に写真入りで健康に関する警告を表示することを義務付ける。
\キオスクでのたばこ販売を止めさせるため、一定の面積を有する店舗にのみ販売を許可する。たばこ税は135%引き上げる。
\ロシアでは人口の3分の1が喫煙者だ。特に女性の喫煙が増えており、1992年から2010年までにその比率は7%から22%へと3倍に拡大した。男性は60%が喫煙する。1日に吸う本数は1箱以上が50%。1人当たりの年間消費は平均295箱に上る。価格は1箱当たり平均40ルーブル(1ユーロ)と安い。
\メドベージェフ首相によると、ロシアでは喫煙が原因で年間40万人が死亡している。医療費や労働力喪失による経済的影響は1兆5,000億ルーブル(370億ユーロ)に上るという。保健省の試算では、喫煙率が10%低下すると、医療費支出が35億米ドル節減できる。
\今回の法案は、世界保健機関(WHO)の「たばこ規制枠組条約」の内容を国内法に転換するものだ。非喫煙者のプーチン大統領が首相を務めていた2008年に同条約に署名し、2015年までに条約に基づく法律施行を約束した。大統領の指示による法案であること、国民の81%、喫煙者でも63%が賛成していることから、その成立は確実視されている。
\ \■たばこ大手の業績に影響?
\ \ロシアのたばこ市場は、フィリップモリス、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)、日本たばこ産業(JT)、インペリアル・タバコの世界4大大手が90%を握る。
\欧米諸国で嫌煙傾向が広がる中、ロシアは年間3,900億本を消費し、中国に続く世界第2の重要市場だ。
\アナリストの推測によると、利益に占めるロシア事業の比率はJTで11%、フィリップモリスで9%、BATで8%、インペリアル・タバコで5%に上る。それだけに、ロシアでの消費縮小は企業にとって黙視できない問題だ。
\企業側は、◇広告禁止の効果はない◇キオスクの多くが倒産する◇価格上昇で密輸が増える――などを理由に法案内容の修正を求めている。
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