世界銀行の民間部門である世界金融公社(IFC)が、ロシアにおける風力発電所の建設を支援する「RUSTEC計画」を提案している。北西部ムルマンスク地方の数十カ所に陸上風力発電所を整備し、ノルウェーかフィンランドを経由して欧州に電力を供給する内容だ。温暖化ガス排出削減・再生可能エネルギーの比率拡大を目指す欧州連合(EU)では低コストでの電力調達が課題となっており、ロシアからの再可エネ輸出は事業的に有望とみている。ただ、ロシア政府の支援は弱く、実現は容易ではないようだ。
\ロシア北極圏は天候的にも風力発電に適し、欧州の設備よりも発電コストが低い。IFCでロシア再可エネ促進プロジェクトを担当するウィレム氏は「北アフリカ・サハラ砂漠の太陽発電プロジェクトDESERTECにヒントを得た。サハラから南欧に電力を輸出できるなら、ロシアから再可エネを供給することも可能だ」と話している。
\ただし、ロシア再生可能エネルギー業界の現状を考慮すると、実現への道は険しい。ロシア風力エネルギー協会のアナトリー・コピロフ副代表は、国内で稼動する風力発電所は一握りに過ぎないと話す。そのうち最大なのはカリーニングラード地方にある出力5.1メガワットの発電所で、実際の稼動出力は4.7メガワットに過ぎない。極東地方のチュクチにおける出力2メガワットの発電所は、操業が好調なのにもかかわらず稼動がとまっている。暖房・温水も供給できるガス火力発電所のほうが効率が良いためだ。
\ロシア政府は年内に風力発電投資の法的枠組みを設定する政令を公布する予定だ。ただ、それは欧州で一般的な固定買取価格(フィード・イン・タリフ)を採用するものではない。年間一定量の再可エネ枠を設け、政府入札で最低価格を提示した業者が供給する内容で、RUSTEC計画の見通しを暗くしている。
\ロシアは2020年に電力消費に占める再生可能エネルギーの比率を4.5%に引き上げる目標だが、その達成は無理とみられている。このため、より現実的な2.5%に下方修正されるとの見方が出ている。
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