2012/12/12

総合・マクロ

「サウス・ストリーム」着工、15年稼働へ

この記事の要約

天然ガス世界最大手のガスプロム(ロシア)は7日、ロシアのガスを南欧へ運ぶガスパイプライン「サウス・ストリーム」の建設に着手した。最重要市場である欧州への輸送能力を強化するとともに、欧州連合(EU)の支援で進められている「 […]

天然ガス世界最大手のガスプロム(ロシア)は7日、ロシアのガスを南欧へ運ぶガスパイプライン「サウス・ストリーム」の建設に着手した。最重要市場である欧州への輸送能力を強化するとともに、欧州連合(EU)の支援で進められている「ナブッコ計画」を阻む狙いだ。専門家らはサウス・ストリーム着工で、ナブッコ計画の実現は絶望的とみている。

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サウス・ストリーム計画は、ロシアのアナパからブルガリアのヴァルナ、セルビア、ハンガリー、スロベニアを経由して北イタリアのタルヴィージオまで全長2,380キロメートルの送ガス管4本を敷設する。総工費は推定160億ユーロで、2015年の稼働、19年の完工を予定する。全4本が稼働すると、年間輸送能力は630億立方メートルとなる。これは2020年の欧州需要(予測)の約10%に当たる。

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黒海に敷設するパイプラインは長さ925キロメートルで、最大水深は2,250メートルと、バルト海海底パイプライン「ノルド・ストリーム」の10倍に上る。ロシアにとっては、ノルド・ストリームに続き、過去にガス輸送問題でたびたび対立しているウクライナを迂(う)回して欧州にガスを供給できるルートとなる。

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EUはエネルギー分野におけるロシア依存からの脱却を目指し、同国を迂回してカスピ海沿岸諸国の天然ガスを欧州に運ぶ「南回廊」構想を推進している。ナブッコ計画もその一つだが、サウス・ストリームが稼働すれば、採算性確保は困難だ。7日には独RWEが同計画からの撤退を正式に認めている。

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一方で、アゼルバイジャンからのガスを欧州へ輸送するルートとしては、「アドリア海横断パイプライン(TAP)」も注目されている。サウス・ストリームとルートが重ならないことに加え、財政危機にあえぐギリシャの経済を支援する効果が見込まれるためだ。

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