1980年代末から90年代初頭の体制転換以降、西側からの資本流入の拡大をてこに成長を続けてきた中東欧諸国だが、そのキャッチアップの勢いは鈍っているようだ。
\オーストリア財務省で1月27日に行われた欧州復興開発銀行(EBRD)の年次報告書「移行報告(Transition Report)」の報告会で明らかにされたところによると、20年前には中東欧諸国の国民一人あたり所得は欧州連合(EU)旧加盟15カ国の平均と比べ15~45%の水準だったが、現在は35~65%に上昇している。財務省のヴァイクライン経済政策・金融市場担当局長は、「このことは劇的とも言える進歩だ」と評価する一方で、今後20年間に起きることは「それほど喜ばしいものではないだろう」と述べ、先行きに懸念を示した。オーストリア国立銀行のリッツベルガー=グリュンワルト国民経済部部長も、中東欧経済の西欧経済へのキャッチアップのペースは予想されていたよりも遅いと指摘。過去には中東欧諸国の平均経済成長率はユーロ圏平均を3%程度上回ってきたが、今日ではその差は1.5%程度にまで縮小しているとして、中東欧の経済水準が西欧に追いつくのは2055年ごろになるとの予測を示した。
\EBRDの報告書によると、経済の停滞が特に深刻なのはクロアチア、スロベニア、ロシア。これらの国々では世界金融危機の影響に加え、改革が徹底されていないことや独裁的な政治体制が経済に悪影響を与えていると指摘している。
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