2014/3/5

総合・マクロ

クリミア危機で株価下落、欧州ガス不足の懸念は小さく

この記事の要約

ロシア政府がウクライナ領クリミア自治共和国に軍隊を派遣して初の取引日となった3日、欧州、米国、アジアでは一様に株価が下落した。一方で天然ガス、原油価格は上昇し、危機に強いとされる金も値上がりした。ロシアからの原油・ガス供 […]

ロシア政府がウクライナ領クリミア自治共和国に軍隊を派遣して初の取引日となった3日、欧州、米国、アジアでは一様に株価が下落した。一方で天然ガス、原油価格は上昇し、危機に強いとされる金も値上がりした。ロシアからの原油・ガス供給の減少について専門家らは、軍事衝突に発展しない限り、その可能性は小さいとの見方でほぼ一致している。

ロシアでは主要株価指数のMICEXが11%安、RTS指数も12.65%安を記録した。個別銘柄では、ガスプロムが最大12.5%値を下げたほか、検索サイト最大手のヤンデックスが14.2%安、電気通信大手のビンペルコムが7.2%安、モバイルテレシステムズ(MTS)が9.87%安となった。

通貨ルーブル相場も同日、1ユーロ=50.63ルーブルまで下がり、史上最安値を更新した。対ドルでも一時1ドル=36.73ルーブルまで下落したロシア中銀はこれを受けて主要政策金利を1.5ポイント引き上げ7%に設定した。また、ロイター電によれば100億ドル規模の市場介入を実施した。

欧州市場では、ロンドンFTSE指数が一時1.6%下落し、昨年6月以来の大幅安となった。ドイツDAX指数は2.8%安、仏CAC指数は2.2%安、アムステルダムAEX指数は2.34%安を記録した。

天然ガス先物は一時10%まで上昇、ブレント原油先物も2%高となった。

■欧州経済への影響は?

世界でも有数のエネルギー輸出国であるロシアだけに、同国との外交関係悪化で欧州経済がどれほどの影響を受けるかにも注目が集まっている。欧州はガス需要の25〜30%をロシア産でまかなっており、その半分をウクライナ経由で輸入している。ただ、◇暖房需要が減る4月が目前に迫っている◇暖冬で欧州のガス備蓄量が昨年より10%多くなっている――などの要因から、現時点ではガス不足の懸念は小さい。

一方で、ロシアにとっても欧州との取引維持は死活問題だ。経済成長が鈍化している中、1日当たり1億ドルの売上につながる欧州へのガス輸出を中止あるいは減らすことは大きな打撃となる。

欧州連合(EU)はロシアのクリム半島進駐を強く非難し、制裁を検討している。しかし、英国やフランスが「主要8カ国(G8)首脳会議からのロシア除外もありうる」というケリー米国務長官に同調する一方、天然ガス需要の3分の1をロシアから輸入するドイツのシュタインマイヤー外相が慎重論を唱えるなど、交渉姿勢には温度差がある。

お互いにその存在を必要としている欧州とロシアだけに、アナリストらは軍事衝突とならない限り、ロシアから欧州へのエネルギー供給は止まらないと予想している。

■IMFなど、ウクライナ支援へ

深刻な財政難に陥っているウクライナに対して先進7カ国(G7)財務相会議は3日、「強力な財務支援」の実施を決定した。国際通貨基金(IMF)の専門家チームが現地で調査の上、今月中旬までに融資案をまとめる。緊急融資として10億米ドルの資金提供が可能で、これを超える分は国内制度改革実施などの条件付きで行うこととなる。最終的にはIMFや欧州投資銀行(EIB)、欧州復興開発銀行(EBRD)など国際機関のほか、二国間融資などの形で総額150億~350億ユーロが供与されるとみられている。

ウクライナは近く80億ユーロに上る債務を償還しなければならないが、中銀の外貨準備高ではまかないきれない状況だ。

また、ガスプロムは4月からウクライナへのガス輸出価格を引き上げる可能性を示唆している。ウクライナはガス需要の半分以上をロシアに依存しており、その影響は大きい。ガスプロムに対する買掛債務は現時点でも15億5,000万ドルに上っているという。

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