2014/4/2

チェコ・スロバキア

スロバキア大統領選、無所属の富豪キスカ氏が当選

この記事の要約

スロバキアで3月29日、大統領選挙の決選投票が行われ、実業家で無所属のアンドレイ・キスカ氏(51)が、中道左派の与党「スメル」を率いるフィツォ首相を大差で破って当選した。フィツォ首相への批判票に加え、既成政党に不信感を持 […]

スロバキアで3月29日、大統領選挙の決選投票が行われ、実業家で無所属のアンドレイ・キスカ氏(51)が、中道左派の与党「スメル」を率いるフィツォ首相を大差で破って当選した。フィツォ首相への批判票に加え、既成政党に不信感を持つ有権者の支持を集めたもようだ。番狂わせの結果に、フィツォ首相は政権運営方針の練り直しを迫られている。

キスカ候補は第一回投票でフィツォ首相に4%の後れを取っていた。しかし、決選投票ではスメル以外の全政党から支持を得て、59.4%を得票。フィツォ候補に18ポイント以上の大差をつけた。

当選発表後の会見では、全ての市民の大統領でありたいと述べ、スロバキア社会の溝を埋めて統合を図る決意を示した。また、人間の顔をした政治を心掛け、大統領に対する信頼を回復。国の活力を復活させて若い世代が故郷にとどまりたいと思うような国づくりを目指すとした。

外交路線ではフィツォ首相と同じく欧州連合(EU)との協力を重視する方向だが、コソボ独立を承認する立場である点が異なっている。スロバキアは、人口の10%を占めるハンガリー系住民の分離主義的傾向に勢いがつくとの懸念から、コソボ独立を承認していない。キスカ候補はこれが「杞憂に過ぎない」として承認を支持している。

フィツォ首相率いる「スメル」は議会で過半数議席を占める強力な基盤を持つ。ただ、失業率が依然として13.5%と高いことなどで支持者の不満が高まったことや、スメルに権力がさらに集中することへの懸念から、キスカ候補を支持する人が増えたとみられる。

大統領の権限は強くないが、司法の重職の指名権などがある。現職のガシュパロヴィッチ大統領はフィツォ首相の政友で、政府と対立することはなかったが、キスカ氏就任で状況は変わりそうだ。

キスカ氏は1990年代に、電化製品のローン販売と消費者金融で起業し、財産を築いた。2006年に事業を売却し、がんの子どもを抱える家族を支える慈善団体を設立した。