2014/7/9

ロシア

IMF「ロシア経済に下振れリスク」、ウクライナ問題が悪影響

この記事の要約

国際通貨基金(IMF)は1日に発表した報告書で、昨今のウクライナ問題をめぐる地政学的緊張によってロシア経済の減速に拍車をかけ、「著しい下振れリスク」に直面しているとの見方を示した。 IMFによると、原油価格の高騰と余剰生 […]

国際通貨基金(IMF)は1日に発表した報告書で、昨今のウクライナ問題をめぐる地政学的緊張によってロシア経済の減速に拍車をかけ、「著しい下振れリスク」に直面しているとの見方を示した。

IMFによると、原油価格の高騰と余剰生産能力の利用に支えられたエネルギー輸出に依存するロシアの経済成長モデルは限界を迎え、景気は2012年から減速傾向にある。加えて、クリミア編入問題で欧米諸国が対ロシア制裁を発動したことが投資に悪影響を及ぼし、景気をさらに下押しする可能性があるとしている。

IMFのロシア調査団のスピリンベルゴ団長は訪問先のサンクトペテルブルクで記者会見し、「ロシアはエネルギー依存型の古い成長モデルが行き詰まり、外国の技術も含む新たな投資が必要な多様化に基づく新たな成長モデルへ移行しつつある大事な時期に制裁が重なった」と指摘。経済、金融の両面で世界経済との統合を深化させるため、政府に対し構造改革を後退させないよう求めた。

IMFでは、今年のロシアからの資本流出額は1,000億米ドルに達すると予想している。ただ、昨年時点で予算の予備費は国内総生産(GDP)の0.3%が確保され、公的債務も対GDPで12%と、財政状況には懸念が少ないと指摘する。一方で、政府に対して慎重な支出方針と、予算の前提となる原油価格について保守的な想定を維持するよう求めた。また、中央銀行に対しては、今年末までに6.5%に上昇すると予想されるインフレ率を抑制するため利上げを実施するよう要請。「利上げは地政学的緊張による資本流出を鈍化させる助けになる」と述べている。