チェコ中道左派政権は22日、来年度予算案を閣議決定した。財政赤字は1億コルナ(39億ユーロ)で、国内総生産(GDP)比2.3%に抑える。同時に公務員賃金と年金の増額で消費を促す。連立政権が下院で安定多数を占めるほか、ゼマン大統領も予算案の内容に同意しており、大きな変更なく可決・成立する見通しだ。
予算案によると、歳出規模は1兆2,190億コルナ、歳入は1兆1,190億コルナ。社会政策の強化が顕著で、公務員賃金を11月から3.5%引き上げ、来年1月から教師や警官、消防・救急隊員では5%引き上げる。老齢年金を平均200コルナ増額するほか、子ども2人以上の世帯の税負担軽減措置を拡充する。
また、医薬品・書籍・粉ミルク・離乳食の付加価値税(VAT)徴収に、10%の超軽減税率を適用する。これによりチェコのVAT税率は21%、15%、10%の3段階に分かれる。
医療保険では、子ども、学生、高齢者、失業者に対する政府負担を拡大し、外来診療費の患者負担を廃止する。
省庁別予算で最も大きい伸びを示したのは地域開発庁で、前年度比26%増の147億コルナが割り当てられた。一方、環境省は94億コルナと28%の大幅減となった。
公共投資額は交通インフラを中心に今年度の710億コルナから944億コルナに拡大する。
アナリストらは、景気加速を賃上げよりも財政赤字の縮小につなげるべきとして、予算案に批判的だ。ウニクレディトのアナリスト、ソビシェク氏は、経済がここ数カ月予想を上回る好調さを示しているのは「自動車産業の回復、ゼロ・インフレ、通貨コルナ安という短期的な要因による」と指摘。余裕のある今、行動しなければ、今後、欧州連合(EU)の財務協定を守るのが難しくなると話している。
郵便貯蓄銀行(PSB)の主任エコノミスト、ブレシュ氏も、VATの税率を3つに分類するよりも、税率を統一した上で1ポイントの減税を実施するほうがよいとみる。現状では企業税務を煩雑化する一方で大きな減税効果が期待できないためだ。
また、公共投資額については、過去2~3年、低水準であったことを踏まえ、景気を後押しするには増額幅を広げるべきとみている。