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2014/12/10

総合・マクロ

ウクライナめぐる対立、西バルカン「巻き込むな」=EU外相

この記事の要約

欧州連合(EU)がウクライナ情勢をめぐるロシアとの緊張関係が旧ユーゴスラビアを中心とする西バルカン諸国に波及することに警戒感を強めている。モゲリーニ外交安全保障上級代表(EU外相)は6日、訪問先のボスニアで、西バルカン諸 […]

欧州連合(EU)がウクライナ情勢をめぐるロシアとの緊張関係が旧ユーゴスラビアを中心とする西バルカン諸国に波及することに警戒感を強めている。モゲリーニ外交安全保障上級代表(EU外相)は6日、訪問先のボスニアで、西バルカン諸国を対立に巻き込まないようロシア側に警告した。

モゲリーニ代表は、「EUとロシアの間にある種の緊張があることは明らかだ」としたうえで、「対立ではなく協力する術を見出し発展させることが双方にとって共通の利益だ」と述べ、「西バルカン諸国をこうしたダイナミクスや考え方から遠ざけた方が良いと確信しており、ロシア指導部も同様に考えると期待している」と述べた。

ロシアは11月に国連安全保障理事会でボスニアに展開しているEU平和維持部隊の任期を延長する決議が採択された際、「外部から圧力をかけてボスニアをEUに加盟させるべきではない」として棄権した。ロシアが部隊の任期延長で棄権に回ったのは過去14年間で初めてのことで、ウクライナ問題をめぐる対立が深刻化する中、同国がEUの東方拡大に対決姿勢を強めていることの現れと受け止められている。

旧ユーゴ諸国のうちスロベニアとクロアチアはすでにEU加盟を果たしているが、セルビア、ボスニア、マケドニア、モンテネグロ、アルバニア、コソボは改革が遅れており、加盟に向けた歩みは順調とは言えない。旧ユーゴ諸国の中でもセルビアとボスニアのセルビア人勢力は、同じスラブ民族で正教のロシアへの親近感が強く、10月にベオグラードで行われたナチス解放70周年記念式典では、プーチン大統領がセルビアを「一番の同盟国」と賞賛し、緊密な関係をアピール。EUは、これらの国々でロシアが影響力を拡大すれば新たな対立の火種が生まれかねないと懸念を強めている。