2015/2/25

コーヒーブレイク

EUへの亡命希望者が急増~コソボ

この記事の要約

コソボが一方的にセルビアからの独立を宣言してから今月17日で7年が過ぎた。しかし、人口180万人のこの小国から国外に活路を見出そうという人が後を絶たない。貧困・失業という経済的理由に加え、汚職がまん延して将来の希望が持て […]

コソボが一方的にセルビアからの独立を宣言してから今月17日で7年が過ぎた。しかし、人口180万人のこの小国から国外に活路を見出そうという人が後を絶たない。貧困・失業という経済的理由に加え、汚職がまん延して将来の希望が持てないためだ。人口の半分が25歳という若さも手伝い、欧州連合(EU)への不正入国を試みる人が急激に増えている。

セルビアとハンガリーの国境にある森林地帯は密入国者が好む国境越え地点だ。ハンガリー側で警備に当たる警察官によると、密入国者数は去年の秋から急増した。以前は多くて1日30人だったのが、今年1月には3,000人を超えた。

コソボは昨年の工業生産高が10%増加、国内総生産(GDP)も5%拡大した。それでも失業率は40%と高く、国民の3人に1人が極度の貧困状態にある。ある密入国者は、「月給150ユーロで休みは3日だけ」と実情を明かす。最終目的地はオーストリアやドイツだ。

コソボからの出国者が増加した理由はほかにもある。以前はハンガリーで亡命を申請すると、可否の判断が出るまで拘留されて動くことができなかった。それが欧州人権裁判所の2012年10月の判決で違法とされ、亡命申請後に事実上、EUの他国へ行くことができるようになった。

また、13年のセルビアとの関係正常化に伴い、コソボ人のセルビア出入国が自由になった。このため、ハンガリーへの国境さえ越えればEUに入れるようになったのだ。

それでも13年に亡命を申請した人は1万3,000人だけだった。これが昨年は4万3,000人、今年は最初の5週間だけで2万3,000人にも上っている。

背景には国民の政治への失望がある。コソボでは昨年6月の議会選挙後、組閣が難航し、EUの圧力を受けてようやく12月にコソボ民主党とコソボ民主同盟を主とする連立政権が樹立した。対立する既存政党による連立で、国民の求める改革が進む見通しが消えた。このような政治の混乱と将来への希望の欠如が人口流出に拍車をかけたのだ。