2015/3/25

総合・マクロ

アナトリア横断パイプラインが着工、ロシア回避のガスルートに期待

この記事の要約

トルコで17日、アゼルバイジャン産天然ガスを欧州に輸出する「アナトリア横断パイプライン(TANAP)」の建設が始まった。完成すればロシアを回避した天然ガス輸送が可能になり、欧州のロシア産ガスへの依存度が低下すると期待され […]

トルコで17日、アゼルバイジャン産天然ガスを欧州に輸出する「アナトリア横断パイプライン(TANAP)」の建設が始まった。完成すればロシアを回避した天然ガス輸送が可能になり、欧州のロシア産ガスへの依存度が低下すると期待されている。

TANAPは、トルコとグルジアとの国境付近からトルコの東西を横断し、欧州方面に伸びる全長1,850キロメートルのパイプラインで、総工費は100億米ドルと想定される。アゼルバイジャンのカスピ海沖に位置するシャーデニス・ガス田を供給源とし、2018年半ば頃には稼働を開始する予定。当初の輸送能力は年160億立方メートルだが、23年には230億立方メートル、26年には310億立方メートルに引き上げる。TANAPはギリシャ国境からアルバニア、アドリア海を通る「アドリア海横断パイプライン(TAP)」に接続し、欧州に天然ガスを供給する。TANAPによってアゼルバイジャンからロシアを通らず欧州に天然ガスを輸送することが可能になり、ガス輸入をロシアに依存する欧州連合(EU)は、エネルギー安全保障上の課題である供給源の多様化に向け前進する。

17日にトルコ・カルフ県で行われたパイプライン着工を記念する式典にはトルコのエルドアン大統領、アゼルバイジャンのアリエフ大統領、グルジアのマルグヴェラシヴィリ大統領が出席。エルドアン大統領は、「地域のエネルギー供給ハブとしてのトルコの地位を確立したい」と語った。TANAPにはアゼルバイジャン国営石油(SOCAR)58%、トルコ国営石油エネルギー公社(TPAO)30%、英石油大手BPが12%をそれぞれ出資している。

旧ソ連から欧州へのガス輸出を巡っては、ロシアが黒海を経由して中東欧に天然ガスを輸送する「サウスストリーム」の建設を計画していたが、EUの反対により昨年12月に建設を断念した。サウスストリーム計画のとん挫を受け、ロシアは天然ガスを黒海経由でトルコに供給するパイプライン「ターキッシュストリーム」を提案しているが、トルコ側ではロシア産エネルギーへの依存が過度に強まることへの警戒感も強く、実現するかは不透明だ。エネルギー省の高官はロイター通信の取材に対し、ターキッシュストリームよりもTANAPを優先する考えを示した。