2015/9/2

総合・マクロ

セルビアとコソボ、関係正常化へ前進

この記事の要約

欧州連合(EU)の仲介でセルビアのブチッチ首相とコソボのムスタファ首相が8月25日、ブリュッセルで会談し、コソボ北部地域にセルビア系住民による行政組織を置くことなどで合意した。両国の関係正常化に向けた歴史的な一歩で、セル […]

欧州連合(EU)の仲介でセルビアのブチッチ首相とコソボのムスタファ首相が8月25日、ブリュッセルで会談し、コソボ北部地域にセルビア系住民による行政組織を置くことなどで合意した。両国の関係正常化に向けた歴史的な一歩で、セルビアにとってはEU加盟交渉が大きく前進する。

アルバニア系が人口の9割を占めるコソボは2008年2月、セルビアからの独立を一方的に宣言した。これまでにEU加盟国や日米を含む108カ国が独立を承認しているが、セルビアは一貫して承認を拒んでいる。しかし、国際司法裁判所がコソボの独立宣言は国際法に違反しないとの勧告をまとめたことからセルビア側が態度を軟化させ、11年3月からEUの仲介によるセルビア・コソボ間の対話がスタート。双方は13年4月、関係正常化に向けた15項目の合意書に署名し、これを受けて14年1月にはセルビアのEU加盟交渉が開始した。しかし、セルビアでは昨年3月、コソボでも同6月に議会選挙が実施され、いずれも政権交代が行われた影響などにより、関係改善に向けたプロセスはこれまで足踏み状態にあった。

EU高官によると、今回の首脳会議ではセルビア系住民が実効支配するコソボ北部地域の扱いについて、セルビア系住民10人で構成する行政組織を設置して自治権を拡大するとともに、セルビア系とアルバニア系の「双方にとって受け入れ可能な」司法制度を創設することで一致した。このほかエネルギーおよび通信分野での協力強化、民族分断の象徴とされてきたコソボ北部のセルビア系住民地域に架かるミトロビツァ橋の使用についても合意に達した。

EUのモゲリーニ外交安全保障上級代表は声明で「今回の合意はセルビアとコソボの正常化プロセスにおいて画期的な成果といえる。一連の解決策は双方の市民に明確な利益をもたらすと同時に、欧州統合に向けて追い風になる」と強調した。