2015/9/30

総合・マクロ

EU加盟国が難民受け入れ分担案を可決、国連機関への拠出など流入抑制策でも合意

この記事の要約

欧州連合(EU)は22~23日にブリュッセルで臨時の内相理事会と首脳会議を開き、中東や北アフリカから域内に流入する難民や移民への対応策を協議した。内相理では紛争が続くシリアなどからの難民12万人を新たに加盟国が分担して受 […]

欧州連合(EU)は22~23日にブリュッセルで臨時の内相理事会と首脳会議を開き、中東や北アフリカから域内に流入する難民や移民への対応策を協議した。内相理では紛争が続くシリアなどからの難民12万人を新たに加盟国が分担して受け入れる案を賛成多数で可決し、すでに合意済みの4万人と合わせて計16万人を今後2年間で受け入れることを決めた。一方、首脳会議ではEU域内への難民の流入自体を抑制するための措置として、シリア難民の支援にあたる国連機関などに少なくとも10億ユーロを追加拠出することや、域外との国境管理を強化することで合意した。

難民の受け入れ分担案は欧州委員会が今月9日に打ち出し、14日の臨時内相・法相理で協議したが、東欧諸国などの根強い反発で合意できず、結論を持ち越していた。22日の会議でもハンガリー、チェコ、スロバキア、ルーマニアが最後まで反対の姿勢を崩さなかったため、全会一致の合意を断念して採決に踏み切り、賛成多数で分担案の導入を決めた。

計画によると、追加分の12万人のうち、今後1年間で計6万6,000人を受け入れる。各国の経済規模や人口に応じて受け入れ人数が割り振られ、分担案に反対した4カ国も対象となる(ただし、移民政策への参加が免除されている英国、アイルランド、デンマークは除く)。具体的にはドイツが1万7,036人と最も多く、フランス(1万2,962人)、スペイン(8,113人)、ポーランド(5,082人)と続く。国内に多くの難民を抱え、最後まで強硬に分担論に反対していたハンガリーには1,294人が割り振られた。残りの5万4,000人については1年後に改めて受け入れ先を決める。

一方、23日の臨時首脳会議では、欧州に押し寄せる難民や移民の流入に歯止めをかけるための対策や、国境管理の強化策などが議論された。10億ユーロの追加拠出は国連難民高等弁務官事務所(UNCHR)や国連世界食糧計画(WFP)など、シリアと周辺国で難民支援を行う国際機関を対象に実施する。活動資金の不足から十分な物資や人手を確保できず、放置された大量の難民らが欧州に押し寄せている現状を改善するのが狙いだ。

シリアから多くの難民を受け入れているトルコやヨルダン、レバノンなどへの支援も拡大する。特に船でギリシャに向かう難民や移民の経由地となるトルコとの協力強化を図るため、10月5日に首脳会議を開いて具体策を協議する。EUはトルコに対して10億ユーロの財政支援を検討中で、見返りに欧州を目指す難民らの渡航を手引きする密航業者の取り締まりなどを求めるものとみられる。

さらに、域外との国境管理を強化するため、EU主導で11月までにギリシャやイタリアに「ホットスポット」と呼ばれる難民管理センターを設置し、難民申請者の登録手続きなどを集中的に処理する仕組みを構築する。一方、難民認定の要件を満たさない経済移民に関しては、同センターが本国送還の手続きを行う。欧州委はこうした移民らが帰還しても「安全が保障される国」のリストを策定しており、10月8日に開く内相理事会で詳細を詰める。

トゥスクEU大統領は首脳会議後の会見で、今後さらに数百万人に上る移民や難民が欧州に押し寄せる可能性があると指摘。「無秩序な流入」に歯止めをかけるため、域外との国境管理を強化すると同時に、大量のシリア難民を抱える周辺国への支援拡大を急ぐ必要があると強調した。