2015/12/9

総合・マクロ

中東欧7カ国、ノルド・ストリーム拡張計画に異議

この記事の要約

ロシアとドイツを結ぶバルト海天然ガスパイプライン「ノルド・ストリーム」の拡張計画に、中東欧諸国が強く反対している。ロシア資源への依存縮小を目指す欧州エネルギー戦略に反するほか、欧州向けガスの経由国の利益を損なうという主張 […]

ロシアとドイツを結ぶバルト海天然ガスパイプライン「ノルド・ストリーム」の拡張計画に、中東欧諸国が強く反対している。ロシア資源への依存縮小を目指す欧州エネルギー戦略に反するほか、欧州向けガスの経由国の利益を損なうという主張だ。ポーランドをはじめとする7カ国は、月内に開催される欧州理事会で同パイプライン計画について取り上げるよう求めている。

ポーランド、スロバキア、ハンガリー、エストニア、ラトビア、リトアニア、ルーマニアの中東欧7カ国は欧州連合(EU)の欧州委員会に対し、ガス供給事業と送ガス事業の分離を求める市場規制(第3次エネルギー・パッケージ)の厳格な運用を求める書面を送付した。また、17、18の両日に予定される欧州理事会で議題として取り上げることも要請した。当初、7カ国との協議に参加していたブルガリアとチェコは署名を見合わせた。

ガスプロムは今年6月、ノルド・ストリームに送ガス管2本を新設し、年間輸送能力を550億立法メートルから1,100億立法メートルに倍増させる計画を発表。9月に墺OMV、独ヴィンタースハル(BASF)およびエーオン、仏エンジー、英蘭系シェルと合弁契約を締結した。

欧州連合(EU)はエネルギー市場自由化政策として、エネルギー企業に対して生産・供給事業と輸送事業を分離することを義務付けている。しかし、ノルド・ストリームの稼働済みの送ガス管2本については、例外的に義務を免除した。

一方、黒海天然ガスパイプライン「サウス・ストリーム」については規定順守を求めたため、ロシアが計画を撤回した経緯がある。

ロシアは欧州の天然ガス需要の約3分の1を供給し、うち半分をウクライナ経由で輸送している。スロバキアも一部を輸送しており、ノルド・ストリームが拡張されれば、両国の年間輸送料収入はそれぞれ20億ユーロ弱、4億ユーロ減ると予想される。

また、現行のノルド・ストリーム稼働率の低さを根拠に、シェフチョヴィッチ欧州エネルギー担当委員兼副委員長(スロバキア)が拡張計画の採算性に疑念を呈するなど、プロジェクトの意味に対する懸念も存在する。(東欧経済ニュース6月24日号「ロシア、欧州向けガスパイプラインを拡充」を参照)