2015/12/2

コーヒーブレイク

トラの森を国立公園に指定~ロシア

この記事の要約

環境問題でもいろいろな批判にさらされているロシアが、めずらしく世界自然保護基金(WWF)の賞賛を受けている。ビキン川が蛇行する沿海州のウスリータイガ(温帯針広混交林)120万ヘクタールを新たに国立公園に指定したのだ。材木 […]

環境問題でもいろいろな批判にさらされているロシアが、めずらしく世界自然保護基金(WWF)の賞賛を受けている。ビキン川が蛇行する沿海州のウスリータイガ(温帯針広混交林)120万ヘクタールを新たに国立公園に指定したのだ。材木を売りたい企業の強力な働きかけにも関わらず、国立公園化に成功したのは、「プーチンさんのトラへの愛」が理由という憶測も流れている。

別名「北のジャングル」と呼ばれるウスリータイガは、針葉樹林である他のタイガと異なり、広葉樹が混生していることが特徴だ。人間の手の入っていない自然な川の流れもあり、虫や魚、獣が豊富だ。それが、アムールトラなど絶滅危惧種の動物たちが生きられる環境を作っている。

アムールトラは100年間で生息数が10万頭から500頭前後まで激減した。現地少数民族に神格化されたという、大きく強く美しいトラが、この森の偉大さの象徴になっているのは納得だ。しかし、ビキンの森にはアムールヒョウやジャコウジカ、シマフクロウ、ヒグマ、ツキノワグマといった他の絶滅危惧種も住んでいる。食物連鎖の頂点に立つトラやクマが生きているというのは、食料となる他の植物や動物の存在を示す。林業とは関係のない、あるがままの森がそこにある。

プーチン大統領は7年前、テレビの撮影隊に向かってきたアムールトラを麻酔銃で撃ち、眠ったトラをなでたり抱きしめたりする様子が放映された。「トラ襲撃」が演出だったのかどうかは定かではないが、「トラを愛でるプーチンさん」の姿は強い印象を残した。

今回の国立公園指定がどういう経緯で実現したか、これも想像するしかない。ただ、もしも「愛」が理由であれば、その気持ちは動物に伝わるだろう。この例を生かして、次は、ぜひ人間愛を示してほしいところだ。

ルーマニア・ブルガリア・その他南東欧・トルコ
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