ロシアの医薬品販売額が年初以来大きく減少している。現地紙『ベドモスチ』が5月31日、医薬品市場の調査会社DSMの最新報告をもとに伝えたもので、1-3月期の販売額は前年同期比10%減の2,703億ルーブル(約36億2,000万ユーロ)だった。同期における減少は統計を取り始めた2008年以来初めて。販売個数も14%減少し、過去最少の118億個となった。
DSMによると、例年販売額が多いのは3月及び10月から11月にかけての時期。医薬品流通会社プロテクのポグレビンスキー氏は「長引く景気の低迷と、購買力の低下を反映している」と話した。独製薬大手シュターダの現地法人シュターダ CISのグルシコフ氏は、ロシアの医薬品市場は患者個人による購入が大半を占めると述べた上で、実質賃金の伸び悩みと、インフルエンザの大規模な流行が見られなかったことを理由に挙げた。2015年は通年で販売額が前年比8.2%増、販売個数は4.4%減だった。
一方、ロシアの医薬品会社の収益性はルーブル安による輸入原料の価格高騰により急速に悪化している。医療上不可欠とされる指定医薬品には価格の上限規制が課せられておりマージンが減少、それに伴い規制対象となる医薬品の生産を取りやめる企業も出始めた。ロシア医薬品工業会によると、2015年中に規制対象となっている80種類の医薬品の製造が中止された。
こうした状況を受け連邦政府も対策に乗り出した。今年中に規制対象となる医薬品を製造する国内企業に対し計40億ルーブルの補助金を支給する予定だ。また連邦反独占局も規制対象の医薬品のうち価格が50ルーブル以下のものについては5ルーブルの値上げを認めることを提案している。(1RUB=1.63JPY)