オーストリア政府は22日、ハンガリーの原子力発電所拡張を欧州連合(EU)の欧州委員会が承認したのは不当として、EU司法裁判所に提訴したと発表した。反原発の姿勢を改めて鮮明にした格好となる。
問題となっているのは、ハンガリー唯一の原発で、首都ブダペストの南約100キロメートルに位置するパクシュ原発。ハンガリーの電力需要の約40%を賄っている。政府は1980年代に建設された4基の旧式原子炉が耐用期限を迎えつつあることから、新たに原子炉2基を建設し、発電容量を2倍に拡大することを決定。ロシアの国営原子力企業ロスアトムに工事を委託し、ロシア側は建設費の過半を占める最大100億ユーロの借款を供与することで合意した。
欧州委はEUの公的支援に関するルールに照らして同拡張事業の可否を審査した結果、問題がないとして昨年3月に承認した。これに対してオーストリア政府は、同原発が両国の国境近くにあることから拡張に反発していた。
オーストリアは1970年代から国内の原発稼働を禁止している。昨年末に発足した新政権も反原発路線を引き継ぎ、提訴に踏み切った。オーストリア政府は英国のヒンクリー・ポイント原発建設計画にも反発しており、これを承認した欧州委を15年に提訴した経緯がある。