格付け大手フィッチ、クロアチアの見通し引き上げ

英米系格付大手のフィッチは先ごろ、クロアチア国債の格付けを外貨建て、自国通貨建て共に「BBプラス」に据え置くと共に、見通しを「安定的」から「ポジティブ」に引き上げた。経済成長を背景とした均衡財政の達成と国際収支の黒字化が評価された。2018年度の財政収支の黒字幅は国内総生産(GDP)の0.4%で、目標の赤字幅0.5%を上回って改善する見通し。17年度の黒字幅は0.8%だった。

フィッチは、2018年は基礎的財政収支の黒字幅がGDP比2.9%と前年に続き黒字となるほか、低い金利と健全なGDPの伸びにより、引き続き一般政府債務が大きく削減されると予想する。14年度末に84%だった公的債務のGDP比率は17年末には77.5%まで低下した。同社は19年末までに同比率が71%まで低下するとの見方を示している。

2019年度については均衡財政が達成されると予想する。クロアチア政府は欧州連合(EU)がユーロ非加盟国に提出を義務付けている収斂プログラム(CP)の中で、同年の財政収支の目標をGDP比0.4%の赤字に置いている。政府閣僚はCPに合わせ、同年中に付加価値税(VAT)、個人所得税又は社会保険料を引き下げる可能性を示唆している。CPでは2020年の均衡財政及び21年の黒字化(黒字幅は0.5%)が予想されている。

GDPの成長率について同社は、外国人旅行者の増加、実質賃金の引き上げ、減税、金融緩和策及びEU関連プロジェクトの実施を反映し、2018年は2.6%、19年は2.5%で推移すると予想している。

フィッチは今年1月、旅行客の増加や財政政策の改善を理由として、同国国債の格付けを2004年以来初めて引き上げ、従来の「BB」を「BBプラス」としていた。

格付け大手3社のうち、フィッチとS&Pが同国を投資適格水準から1つ下の水準に置く一方、ムーディーズは2つ下のランクに据えている。見通しについては、S&Pとムーディーズは「安定的」としている。

クロアチアのマリッチ財務相は、フィッチの見通し引き上げの決定は財政政策が評価されたものだとし、現行政府の任期末までの投資適格級への引き上げについて自信を示した。

政府は今年5月、ユーロ加盟に向けた戦略を中銀との合意の上で正式に採択した。加盟の目標時期は正式には発表されなかったものの、プレンコビッチ首相は2020年までの欧州為替相場メカニズム(ERM II)への加盟に期待を示し、それが23年のユーロ加盟につながる可能性を示唆した。

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