ロシア鉄道に「革命の波」が迫っている。行きずりの人とわいわい過ごす開放式の寝台車(3等車)が近代化されるというのだ。モスクワからウラジオストクまでの6日間を70~80ユーロで移動できるなど、安さが魅力で利用者の多い3等寝台。狭いなかで同乗者と茶を飲み酒を酌み交わし、話をしながら時間をつぶすスタイルは、ロシアの鉄道旅行のイメージとして皆の頭に根付いている。
さて、この3等寝台は車両1台に寝台54台が連なる。ベッドの長さは165センチ。自然と通路に手足が伸びることになる。ずいぶん昔だが、ノキアの携帯電話の宣伝文句に「ノキア・コネクティングピープル」というのがあった。3等寝台では手足が触れ合わないことはない、という現実から「ロシア国鉄・コネクティングピープル」という冗談がはやったものだ。
新しい車両は各ベッドに灯り、コンセント、カーテンを、トイレには液体せっけん、おむつ交換台を備え、シャワー室もある。しかし、ベッドの大きさは小さいままだ。でも、上段への上り下りのためにはしごがつくそうだから、これまでよりは手足の投げ出しが難しくなるかもしれない。
導入は来年からだが、鉄道の旅がすぐに変わるようには思えない。乗客は日持ちのする堅ゆで卵や鶏肉のグリルなど食料を持ち込み、お茶はやはり持参のティーバッグと車内で無料でもらえる熱湯で入れる。新車両の設計者ナザロフさんも、このようなスタイルは続くとみており、インタビューでは「鶏を食べた指をカーテンで拭かない限りOK」と答えている。