2019/1/9

総合・マクロ

ルーマニアがEU議長国に就任、調整能力を疑問視する声も

この記事の要約

ルーマニアが1日、前任のオーストリアから引き継いで欧州連合(EU)議長国に就任した。2007年に加盟したルーマニアが議長国を務めるのは今回が初めて。6月末までの任期中には英国のEU離脱や欧州議会選挙など、EUの将来を方向 […]

ルーマニアが1日、前任のオーストリアから引き継いで欧州連合(EU)議長国に就任した。2007年に加盟したルーマニアが議長国を務めるのは今回が初めて。6月末までの任期中には英国のEU離脱や欧州議会選挙など、EUの将来を方向づける重要案件が控えており、ルーマニアは難しい局面で加盟国の合意形成を図る役割を担うことになる。

ルーマニアの議長国就任をめぐっては、同国の調整能力を疑問視した欧州委員会のユンケル委員長の発言がドイツ紙に掲載され、物議をかもした。同委員長は先月29日付ヴェルトに掲載されたインタビューで、たとえ「技術的に十分な準備」ができたとしても、ルーマニア政府は「EU加盟国を束ねる議長国に就任する意味を完全には理解していない」と発言。「議長国は進んで加盟国の意見に耳を傾け、自国の利害関係は後回しにすることが求められる。この点で少々疑念を抱いている」とつけ加えた。

ユンケル委員長の発言は、真の実権を握る与党・社会民主党(PSD)のドラグネア党首の意向を色濃く反映した連立政権が汚職捜査を進める検察への介入を強めていることや、恩赦と刑法改正をめぐり、大規模な抗議デモが発生したことなどが背景にある。さらに司法制度改革などをめぐる現政権とヨハニス大統領の対立も深刻化している。

政府は行き過ぎた汚職取り締まりが法の支配をゆがめていると主張し、昨年7月には国家汚職対策局の首席検事を解任したが、欧州委は同措置について、汚職や腐敗防止の取り組みが後退すると強く非難している。また、ドラグネア氏は国民投票の不正に絡んで執行猶予付きの有罪判決を受けた後、昨年6月には職権乱用と偽装工作で懲役3年6カ月の有罪判決を言い渡されており、恩赦法の制定は同氏の救済が最大の目的とみられることから、国内外で批判が高まっている。