天然ガス大手の露ノバテク、LNG貯蔵で西部ガスと覚書

ロシア天然ガス大手ノバテクが先月、液化天然ガス(LNG)の貯蔵施設利用に向けて、西部ガス(福岡市)と覚書を交わしていたことが判明した。北極圏産ガスを九州に貯蔵し、中国や韓国などのスポット需要に素早く対応する狙い。西部ガスはこれを受けて、LNGタンク2基の増設を検討している。

両社の取引が実現すれば、ノバテクは海氷の少ない夏季のうちに、アジア太平洋向けLNGを消費地近くに備蓄し、輸送費を削減できる。

中国は大気汚染改善に向けて石炭から天然ガスへのシフトを急速に進めており、スポット取引に対応できる能力が同国への供給拡大につながるとみられている。同時に、パイプライン供給のストップといった不慮の事態にも対応できるようになる。

ノバテクは現在、北極圏ギダン半島におけるLNG開発計画「アークティック(北極)LNG2」の実施を検討中。年内に最終決定する予定だ。実現すれば、2023年末に生産を開始、液化施設3系列の稼働後は年間1,980万トンを出荷する。

アークティックLNG2や、ギダン半島の西隣に位置するヤマル半島のLNG生産施設からアジアへ出荷する場合、北極海航路では所要日数が15日と、スエズ運河経由の南回り航路の半分に短縮できる。

アジア太平洋への輸出に向けたインフラ整備では、ノバテクは9月にもカムチャツカ半島にLNG積み替え基地を建設する計画を発表している。

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