ドイツで人気が急落した古いディーゼル車が中欧や南東欧に多く輸出されているようだ。これらの地域では車体価格や燃費こそ重要だが、排気ガスの質を気にするドライバーは少ない。ドイツ車が安く買えるというのでチャンスと思う人も多いだろう。一方で地元の環境保護団体は「西欧のゴミ捨て場にされている」と怒りの声をあげている。
ドイツでは地元メーカーの排ガス不正に加え、環境基準達成に向けて旧式ディーゼル車の走行禁止区域が数都市で導入された。このため、古いディーゼル車のオーナーには売り急ぐ人が増えている。そこに目をつけて、中欧や南東欧のディーラーが仕入れを積極化しているもようだ。
西欧からの中古車受入国として知られるルーマニアでは、2017年から1年間でディーゼル中古車の数が3万1,000台以上増えた。チェコでも「ディーゼル車の侵略かと思うほど(現地中古車ディーラー協会)」多くなっているようだ。
ドイツでは「大気汚染源」と嫌われる旧型ディーゼル車だが、チェコやポーランド、クロアチア、セルビアなどには走行禁止区域もなく、制限なく走ることができる。
チェコの顧客は燃費第一なため、20~30%節約できるディーゼル車を売るには有利だ。中欧中古車販売大手AAAオートによると、同社サイトに広告が出された中古車のディーゼル比率は60%。スロバキアではこれを上回る78%となっている。
セルビアでは車体価格が決め手のため、輸入された中古車の平均車齢は12年と高い。排ガス基準「ユーロ3」の中古車の輸入制限もなく、環境意識は低い。
車齢といえば、ルーマニアで走る自動車の平均車齢は16年強、チェコは14年、ポーランドで13年強、クロアチアで14年。日本の8.6年に比べても古い。
チェコの環境保護団体「虹運動(Hnuti Duha)」のピニョス氏は「中欧や南東欧を、西欧で要らなくなった古くて空気を汚す製品のゴミ捨て場にしてはならない」と憤慨している。ただ、地元の環境意識が低く、ステータスシンボルである自動車は「大きければ大きいほど良い」という人が多いという。
欧州内でもこれだけの違いがあるのだから、グローバルな環境対策の道は険しそうだ。