中央アジア諸国におけるインターネットの普及率が年々上昇している。ネット利用の拡大は政府やメディア産業のみならず一般の市民の間でも進んでおり、カザフスタンではネット事業者の売上がここ5年間で倍増した。しかし一方では接続料金が高く接続速度など品質が劣るといった課題も抱えており、一部の政府はてこ入れに乗り出している。
■カザフスタンのネット事情と国別接続料金
カザフスタンではインターネット産業の売上が総額で803億テンゲ(1億8,780万ユーロ)と過去5年間で倍増した。インターネットユーザーの数は同時期に65万人以上増加している。
2018年末のインターネット利用者数は250万人。首都アスタナやアルマトイなどの大都市では交通機関、レストラン、ショッピングセンターなどの公共の場でWi-Fiを利用することも可能だ。
ただブロードバンドやモバイルインターネットの接続速度を比較するSpeedTestによると、同国をはじめ中央アジア諸国の接続環境は良好とは言えない。カザフスタンはブロードバンド通信の接続速度で177カ国中61位となる31.86メガビット/秒。他の中央アジア諸国で100位以内に入ったのは92位(20.52メガビット/秒)のキルギスタンのみだった。モバイルインターネットの品質ではさらに後れを取っており、100位以内に入ったのは70位のカザフスタン(19.48メガビット/秒)のみ。タジキスタンは最下位の137位(5.04メガビット/秒)だった。
接続料金を見ると、カザフスタンで政府公認のプロバイダーによるサービスを利用した場合、接続速度10メガビット/秒で月額10.5ドルから13ドル。ウズベキスタンではブロードバンドの利用料は12ドル、キルギスタンでは17ドルから18ドルである。
一方モバイルデータ通信では、中央アジアは世界でも最も安い地域となっている。英国の価格比較サイト『cable』によると、1ギガビット当たりの料金では、キルギスタンはインドに次ぐ2位で0.27ドル、カザフスタンが3位で0.49ドルだった。CIS諸国の中では唯一トルクメニスタンの料金が高く(19.81ドル)、それに次ぐタジキスタンの4倍以上となっている。
■接続環境改善に動く各国政府
こうした状況を背景に中央アジア諸国の中には政府が接続環境の改善に向けて動き出した国もある。ウズベキスタンのミルジヨエフ大統領は昨年、2019年にインターネットの接続料金の大幅な引き下げを行うと共に、接続速度を現在の4倍以上に引き上げ2020年までに他のCIS諸国並みにするよう指示を出した。同国ではインフラの老朽化などを理由として依然として通信障害が発生しているほか、同国唯一のプロバイダーであるウズベクテレコムが通信サービス市場を独占しようとしているとの批判もある。
トルクメニスタンでも政府が新しい措置を打ち出している。政府はインターネットユーザーを大幅に増やすため新しい料金体系を導入することを明らかにしたほか、新システムの採用により携帯電話で7つの国営テレビチャンネルを楽しむことができるようになると一部で報じられている。
同国では昨年、インターネットユーザーの数が前年の1.2倍まで増加した。またネットバンキングやモバイルバンキングの導入も進みつつある。通信省によると、2012年以来、使い放題の家庭向けネット通信の価格が17分の1に下落するなど改革も進んでいる。しかし一部の利用者からはロシアの通信事業者MTSが同国から退出した後にネットの通信環境が悪化したとの批判が出ている。
キルギスタンは1992年に始まったインターネットの導入以来、高速モデムの採用や国家機関によるインターネットアクセスの提供を行ったりしてきた。同国では現在国民の59%がインターネットを利用している。ただ北部と南部又は都市部と農村部の普及率に格差があるのが課題だ。周波数帯を主にカザフスタンとロシアから購入しているのも問題の1つである。
タジキスタンの料金は世界でも最も高額で職場でインターネットを利用するのは一部の組織に限られる。世界銀行によると、ネット料金が高額である理由は、国家が必要以上に関与していることのほか、ネットプロバイダーに対し物品税が導入されたことが影響しているという。その上同国では3月27日からインターネット料金が大きく引き上げられる。これは同国の独禁法当局の方針によるもので、インターネットプロバイダーとモバイル事業者は接続料金の引き上げを求められている。
政府によると同国には300万人のインターネットユーザーが存在するが、多くがその接続速度に不満を抱いている。昨年初めから全てのネット接続が共通の通信センターを通して行われるようになり通信速度と品質が低下したのが原因の1つだ。
しかし同国の人々にとりモバイルインターネットは不可欠なものとなっている。山岳地帯ではインスタントメッセージやソーシャルネットワークが唯一の信頼性の高い通信手段だからだ。(1KZT=0.29JPY)