カザフスタンを30年間治めてきたヌルスルタン・ナザルバエフ大統領(78)が19日、辞任を表明した。20日には2020年春の選挙までの暫定大統領としてカシムジョマルト・トカエフ上院議長(65)が就任した。「国民の父」として終身大統領の地位を確かにしていたナザルバエフ氏が突然辞任したことについて驚きが走ったが、識者の間では長女のダリガ・ナザルバエヴァ氏(トカエフ氏の後任として上院議長に就任)を後継ぎとするための布石ではないかと捉えられている。
大統領職こそ返上したものの、ナザルバエフ氏は共和国安全保障会議議長として軍・保安機関における最高決定権を握る。与党・ヌルオタン党首など他の要職にもとどまるため、今後も国政に対する強大な影響力を維持し続けることになる。
ナザルバエフ氏は1989年にソ連のゴルバチョフ書記長(当時)がカザフ共産党第一書記に任命して以来、同国のトップに君臨し続けてきた。強権政治が批判されるが、天然ガスやウラン、希少土類(レアアース)など豊富な地下資源を背景にカザフスタンを中央アジア最大の経済国に育てた功績がある。
ただ、資源偏重型の経済構造が仇となり、2014年秋以降の原油安が経済・通貨危機につながった。現在でもその影響が払しょくしきれておらず、先月にはナザルバエフ氏が経済政策の不十分さを利由に内閣を更迭した。
なお、トカエフ新大統領の提案で20日、首都の名称がアスタナからナザルバエフ氏の名前である「ヌルスルタン」に改められた。