ウクライナ大統領選、「政治の素人」が現職に大勝

4月21日にウクライナで実施された大統領選挙の決選投票は、コメディアンのヴォロディミル・ゼレンスキー候補(41)が現職のペトロ・ポロシェンコ候補(53)に圧勝した。汚職横行や東部での戦闘継続でポロシェンコ大統領への信頼が下落する中、政治の変化を求める国民の願いが「政治の素人」であるゼレンスキー候補の大勝につながった。政治的目標ではポロシェンコ氏と似ているゼレンスキー氏が、具体的にどう目標を達成していくのか、これからが正念場だ。

選挙管理委員会の発表(開票率100%)によると、ゼレンスキー候補は73.2%を得票し、ポロシェンコ候補の24.5%を圧倒した。地域別ではリヴィウ県を除く24県・特別市でゼレンスキー候補がポロシェンコ候補を制した。選挙に対する国民の関心は高く、投票率は62%と、第1回投票より1ポイント低いだけにとどまった。

ゼレンスキー氏は◇欧州連合(EU)・北大西洋条約機構(NATO)への加盟◇汚職対策◇東部での戦争終結◇市民の目線に立った政治(高官の不逮捕特権廃止、あらゆるレベルで国民投票を導入など)――を公約としているが、特に内政では、議会に基盤を持たないゼレンスキー氏の制約は大きい。10月27日に予定される議会選挙では、ティモシェンコ元首相の「祖国党」、ユーリ・ボイコ氏の率いる親ロ政党などが議会入りするとみられ、ゼレンスキー氏が立党した「国民のしもべ」は現在のところ支持率26%と過半数議席には遠い。

ゼレンスキー氏への支持に慎重な声もある。ポロシェンコ氏の政敵である富豪(オリガルヒ)のイホル・コロモイスキー氏との関係が不透明だからだ。疑念を呼んでいる事例として◇ゼレンスキー氏が大統領役を務めたコメディー・ドラマを放映するテレビ局のオーナーが、コロモイスキー氏である◇ゼレンスキー氏が過去に同氏を訪ねてスイスとイスラエルに合わせて13回、足を運んだ◇コロモイスキー氏の弁護士がゼレンスキー陣営で重要な役割を果たしている――などがある。また、コロモイスキー氏が選挙戦中、自身がオーナーを務めていた「プリバートバンク」の2016年の「国有化は不当」とし、数十億ドルの損害賠償を求めていることも不信感を高めている。

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