2019/5/15

総合・マクロ

トルコ中銀が金融引き締め策、リラ下落に対処

この記事の要約

トルコ中央銀行は9日、1週間物レポ金利(主要政策金利=24%)での貸し出しを停止した。市中銀行への貸出金利を実質的に引き上げて通貨流通量を抑え、イスタンブール市長選挙のやり直しが決まった7日以降の通貨リラ急落を食い止める […]

トルコ中央銀行は9日、1週間物レポ金利(主要政策金利=24%)での貸し出しを停止した。市中銀行への貸出金利を実質的に引き上げて通貨流通量を抑え、イスタンブール市長選挙のやり直しが決まった7日以降の通貨リラ急落を食い止める狙いがある。ただ、リラ安の原因は政治にあるとの見方もあり、今回の措置が通貨安定につながるかどうか不透明だ。

中銀は、政策金利の中で最も利率が低い1週間物レポ金利による資金供給を停止した。市中銀行が上限金利である翌日物貸出金利(25.5%)で調達しなければならなくなるため、この措置は実質的な利上げを意味する。通貨流通量を抑えることでリラを防衛する狙いだ。

しかし、リラ安が続く原因は、エルドアン大統領の経済政策に対する市場の不信が募っていることにある。市長選のやり直しは市場にとって、投票が行われる6月23日まで先が読めないことを表し、改めてリラの下落をもたらした。

一方で中銀は外貨準備高不足が3月末に明らかになったほか、先月の金利据え置き時に将来の利上げに消極的な立場を示し、中銀の中立性に対する市場の疑いをさらに強めた。

そもそもリラ安の根源は、経常赤字・対外債務の拡大、原油価格上昇、米国金利正常化に伴う新興国の資金調達困難化、世界経済の減速懸念といった経済的要因にある。しかし、エルドアン政権がこれらの問題に建設的に対処せず、中銀を含む国家行政機関に圧力をかけ、その解決を遅らせていることが問題の深刻化を招いているのだ。これを示すように、通貨リラの対米ドル相場は年初以来16.8%下落した。昨年も1年間で4割近く下がっている。

■財政支援に中銀準備金を投入

トルコでは財政悪化を食い止めるため、中銀の準備金400億リラ(59億340万ユーロ)を国の会計に繰り入れる準備が進められているようだ。ロイター通信が財務省関係者3人の話として伝えたところによると、中銀は外貨準備金とは別に「非常時の資金」として準備金を蓄えることが法的に義務付けられている。これを財政支援に投入する法案が近く議会に提出される見通しだ。(1TRY=18.06JPY)