セルビアのインフラ建設、中国企業が台頭

セルビアで中国企業による複数の大規模インフラ建設プロジェクトが進行している。事業費は総額で20億ユーロに上り、首都ベオグラードとハンガリーのブダペストを結ぶ高速道路をはじめ、地下鉄、熱供給施設、工業団地、自動車道路、ドナウ川にかかる橋梁などの建設が計画されている。これらのプロジェクトはいずれも中国の企業が建設を請け負い、金融機関が資金を貸し付けるタイドローン(ひも付き融資)により実施されるもので、政府はプロジェクト総額がさらに80億ユーロ増える可能性があるとみている。

セルビア運輸省によると、中国企業が実施する中で最も規模の大きいプロジェクトの1つがベオグラードとブダペストを結ぶ高速道路で、政府系の中国輸出入銀行が全体の85%に当たる40億ユーロを貸し付ける。同事業のセルビア国内の区間については既に建設が開始されている。

モンテネグロのアドリア海沿岸の都市バールにつながる自動車道の建設事業では、セルビア国内のプレリナとポジェガを結ぶ区間の建設が始まっている。同国で進む自動車道建設プロジェクトの総延長は400キロメートルにおよぶ。

セルビアとボスニア・ヘルツェゴビナを結ぶモラバ回廊や、北西部のルマ-サバチ間及びサバチ-ロズニツァ間の道路は年末までに着工する見通しだ。プロクプリェから南部の大都市ニシュ、およびコソボに接するメルダレを経由してコソボの首都プリシュティナに抜ける路線の建設は2020年中の着工が予定されている。

地形が山がちな西バルカン諸国における自動車道の建設では橋梁やトンネル工事が不可欠で、建設費用がかさむ傾向がある。特に汎欧州輸送回廊の一部となる11号線のうち、西部のポジェガとボリャレを結ぶ107キロの区間はその地形により難工事が想定されており、必要なトンネル数51、橋梁100カ所、高架や道路のくぐり抜けが必要となる箇所が20カ所ある。同区間だけで総工費は20億ユーロに上る。

セルビアの運輸研究機関CIPによると、ほかにも中国企業の中国路橋工程が南西部のイバンツァを通りポジェガとボリャレを結ぶ路線の建設を計画中で、2021年以降に着工の予定だ。ボリャレからの道路はモンテネグロ国内で沿岸の町バールに向かう道路と接続される。

こうしたプロジェクトの資金は主に中国からの融資で賄われている。中国の銀行は中国企業が建設を請け負うことを条件に融資しており、建設労働者も建材も中国から持ち込まれている。セルビアの現地企業は下請け事業者として中国企業の下でプロジェクトに従事しているのが実態だ。隣国のモンテネグロはセルビアとの間の高速道路建設で中国から多額の融資を受けたため、昨年の国家債務は国内総生産(GDP)の実に8割近くに達し、財政支出の削減などを余儀なくされている。

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