2019/10/16

総合・マクロ

西バルカン3カ国が出入国審査廃止で合意、21年までに「小シェンゲン圏」形成へ

この記事の要約

人の自由移動を実現することが生活水準の向上や失業率の低下につながると指摘し、より良い未来に向け「21年までに3カ国の市民が身分証を提示するだけで、国境を越えて自由に圏内を往来できるようにする」と宣言した。

こうした中、ロイター通信は10日、フランスが北マケドニアおよびアルバニアとの加盟交渉の開始に反対していると報じた。

欧州委員会は5月、加盟条件を満たすための改革に進捗があったと判断し、両国との交渉開始を閣僚理事会に勧告した。

アルバニア、北マケドニア(旧マケドニア)とセルビアは10日、セルビアの首都ベオグラードで首脳会談を行い、2021年までに3カ国間で旅券(パスポート)検査などの出入国審査を廃止することで合意した。3カ国にモンテネグロ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボを加えた西バルカン6カ国はいずれも欧州連合(EU)加盟を目指しているが、英国の離脱で結束が揺らぐ中、EU側では受け入れに慎重な意見が根強く、早期の加盟実現は困難な情勢。3カ国はこうした実情を踏まえ、「小シェンゲン圏」を形成して圏内の国境管理を廃止し、人の自由移動を実現する。

セルビアのブチッチ大統領は会談後の共同記者会見で「われわれは共にEU加盟を目指しているが、自分たちの意思で自らの将来を決めることで一致した」と強調。人の自由移動を実現することが生活水準の向上や失業率の低下につながると指摘し、より良い未来に向け「21年までに3カ国の市民が身分証を提示するだけで、国境を越えて自由に圏内を往来できるようにする」と宣言した。同大統領によると、3カ国は11月10日にリゾート地として知られる北マケドニアのオフリド湖で次回会合を開く予定で、アルバニアなど他の西バルカン諸国にも参加を呼びかけるという。

こうした中、ロイター通信は10日、フランスが北マケドニアおよびアルバニアとの加盟交渉の開始に反対していると報じた。欧州委員会は5月、加盟条件を満たすための改革に進捗があったと判断し、両国との交渉開始を閣僚理事会に勧告した。加盟国の半数以上は交渉開始を支持したものの、一部の国が慎重姿勢を示したため、閣僚理は6月にEU拡大に関する声明を発表し、10月をめどに最終判断を下す方針を示していた。

ロイターによると、フランスはEU内の改革を優先すべきだとの立場で、北マケドニアとアルバニアに対してもさらなる改革を求めている。同国高官はロイターの取材に対し、「両国はまだ交渉開始の条件を満たしていないため、さらなる取り組みを求めた。年内の交渉入りはない。来年の然るべき時点で改めて状況を確認する必要がある」と述べた。