デンマークエネルギー庁は10月30日、ロシア産天然ガスをバルト海経由でドイツに運ぶパイプライン「ノルドストリーム2」の建設計画について、自国領海での敷設を許可したと発表した。パイプラインが領海を通過するスウェーデンとフィンランドは早い段階で敷設を許可しており、建設作業はすでに9割近く終わったとされる。デンマークが許可を保留したことでプロジェクトの遅れが懸念されていたが、これで当初の計画通り年内にも完成する可能性が出てきた。
ノルドストリーム2はウクライナを迂回し、バルト海を通ってロシアとドイツ北部を結ぶ全長1,200キロメートルのパイプラインで、輸送能力は年550億立方メートル。総工費95億ユーロの同プロジェクトはロシアの国営ガスプロムが主導し、英蘭系ロイヤル・ダッチ・シェルやオーストリアOMVなどが出資している。
デンマークは事業主のノルドストリーム社に対し、敷設ルートにあたる大陸棚での工事を許可した。同社は数週間以内に基礎工事に着手できると説明している。プーチン露大統領は30日、訪問先のハンガリーで「デンマークは自国の主権と欧州諸国の利益を守った」と述べ、同国による建設許可を歓迎した。
欧州連合(EU)は2014年のウクライナ危機を受け、エネルギー分野でのロシア依存の低下と供給源の多様化を目指している。ロシアと共にノルドストリーム計画を推進するとドイツは、ロシアとウクライナの紛争に伴うガス供給の混乱から欧州諸国を守るのがプロジェクトの目的と主張しているが、東欧諸国はEUのエネルギー戦略に反するとして強く反対している。米国も欧州でロシアの影響力が高まる事態を警戒し、プロジェクトに出資する企業への制裁をちらつかせて中止を求めてきた。パイプライン完成に向けて大きく前進したことで、米国が今後EUへの圧力を強める可能性もある。