東欧3カ国、難民受け入れ拒否は履行義務違反=EU裁法務官

欧州連合(EU)司法裁判所の法務官は10月31日、2015年の欧州難民危機を受けてEUが導入した難民の受け入れを加盟国で分担する暫定措置について、ポーランド、ハンガリー、チェコが受け入れを拒否したのはEU法上の義務不履行にあたるとの見解を示した。司法裁は法務官の意見に沿った判決を下すケースが多く、最終的に違法と判断した場合、3カ国は制裁金を科される可能性がある。

EUは15年9月、中東や北アフリカから域内に流入する難民や移民への対応策として、2年間でシリアなどからの難民16万人を加盟国が分担して受け入れることを決めた。大量の難民が押し寄せるギリシャとイタリアの負担を減らすための措置で、各国の経済規模や人口に応じて受け入れ人数が割り振られた。しかし、東欧諸国は難民の受け入れを加盟国に強制することはEU基本法に抵触するなどと反発。ポーランド、ハンガリー、チェコは最後まで受け入れ要請に応じなかったため、欧州委員会が17年末に履行義務違反で司法裁に提訴していた。

シャープストン法務官は「3カ国は難民受け入れを分担する暫定措置の決定に従わず、EU法に基づく義務を履行しなかった」と批判。「加盟国は連帯の原則に沿って、時には負担と責任の分担を受け入れる必要がある」と指摘した。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、今年に入り中東やアフリカから地中海経由で欧州に渡ってきた難民や移民は10月初めの時点で約7万6,000人に上る。前年の同時期に比べると少ないものの、春以降は増加傾向が続いている。EUとトルコの関係悪化を背景に、最近はEUとの協定に基づきこれまで難民を受け入れてきた同国から欧州に流入するケースも増えている。

こうしたなか、ドイツ、フランス、イタリア、マルタの4カ国は9月下旬、難民申請が認められた人を加盟国が分担して受け入れる案で合意した。非政府組織(NGO)などが地中海で救助した人をイタリアやギリシャに送り、難民認定された場合は加盟国が分担して受け入れる一方、経済的な理由から欧州を目指す経済移民と判断された人については、本国に強制送還する仕組み。しかし、10月中旬に開いた内相理事会では同案を支持した国はごく一部にとどまり、難民割り当て制度の整備は進んでいないのが実情だ。

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