石油大手シェル、ロシア事業の強化を計画

英・オランダ系石油大手のロイヤル・ダッチ・シェルが、ロシア事業を強化する意向だ。ロシア事業責任者であるクレーマース(Cremers)副社長は、西シベリアの石油事業と液化天然ガス(LNG)事業「サハリン2」に触れ、事業の継続・拡大に積極的な姿勢を示した。ロイター通信は昨年11月に「サハリン2」の増産計画が凍結されたと報道していた。

クレーマース副社長は報道陣に対し「わが社は西シベリアの事業を拡大しているところで、ロシアにおける地位強化を狙っている。天然ガスについていえば、すでにLNG市場で主要な役割を担うまでに至った」と明言。「サハリンで技術的問題が生じていることは周知の事実で、我々の地位をどう強化・改善していくかが課題となっているが、全体として事業強化の方向性に変更はない」と話した。

サハリン2の増産計画については「検討中であり、凍結の事実はない」とし、ロイター通信の報道を否定した。計画遅延を認める一方で主要供給先に近い地の利から、遅れがあっても不利にはならないとの見方を示した。増産に向けた天然ガス調達については、「サハリン1からは調達できないという前提に立ち、サハリン2を運営する合弁会社サハリンエナジーの持つ資源を開発する可能性を検討中」で、結果が出るまでには1年以上かかる見通しだ。

サハリン2はロシア初のLNG事業で、2009年から商業生産を開始した。11年には年産規模960万トンのフル稼働に移行し、2018年までに1,141万トンまで年産量を引き上げることに成功した。

今後、第3期投資を通じて1,500万トンへの増産が予定される。昨年4月には、サハリンエナジーが天然ガス液化第3トレイン建設のための文書作成を完了したと報じられたが、やはり原料となる天然ガス調達が前進の障害となっているもようだ。翌5月にはサハリンエナジーの過半数株を持つ国営ガスプロムが、今後開発するサハリン3を調達先とすることを検討中と発表している。

クレーマース副社長は、バルト海を経由してロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルド・ストリーム2」敷設計画についても、参加を継続する姿勢を明確にした。「米国による制裁で実施が延期されるかもしれないが、パイプライン輸送には利点があり、欧州のエネルギー安定調達のためにもプロジェクトを継続すべき」とした。

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