経済・財政状況に関する国別報告書、生産性や公的債務削減で改善要求

欧州委員会は2月26日、欧州連合(EU)加盟国の経済・財政状況を分析した国別報告書を公表した。域内における生産性の伸びは依然として鈍く、低調な投資や労働力の高齢化、労働力需給のミスマッチなどが潜在的な成長を阻害していると分析。EU全体で持続可能な経済成長を実現するため、加盟国がそれぞれマクロ経済の不均衡を是正し、直面する課題への取り組みを強化する必要があると指摘している。

国別報告書は、加盟国が予算案や経済政策を策定するのに先立ち、事前にEUレベルで各国の政策を評価・調整する手続きである「ヨーロピアン・セメスター」の一環として、欧州委が毎年まとめているもの。環境の持続可能性、生産性の伸び、公正性、マクロ経済の安定性という4つの項目に重点を置き、各国が抱える課題への取り組みや潜在的な不均衡を分析した内容となっている。生産性、労働市場、公的債務などの現状分析に加え、国連が2030年を達成期限として掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」に沿った取り組みの進捗が、今回初めて評価項目に加わった。

労働市場に関しては、全体としては労働環境の改善により貧困や社会的排除が解消に向かっているものの、失業率は引き続き国よって大きなばらつきがあると指摘。公的債務に関しては、多くの加盟国で国内総生産(GDP)に対する債務残高の比率が低下傾向にある一方、イタリア、ギリシャ、キプロス、ポルトガルでは債務比率が依然として100%を超えており、債務削減が最も必要な国々で大きな進展がみられないと警告した。

また、公共投資は引き続き低水準にとどまっていると指摘。経済成長を促して環境に配慮した持続可能な経済社会への転換を後押しするため、ドイツやオランダなど健全な財政を維持している国は投資を拡大すべきだとの見解を示した。

加盟国は国別報告書を踏まえ、雇用と成長の押し上げやマクロ経済の不均衡是正に向けた政策をまとめて、4月中に「改革プログラム」を欧州委に提出。欧州委はこれを分析し、5月をめどに各国が新たに取り組むべき課題をまとめた「国別勧告」を提示する。

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