米格付け大手フィッチ・レーティングスは3月30日、中東欧地域の金融セクターの格付け見通しを「ネガティブ」に改定したことを明らかにした。新型コロナウイルスの流行拡大による経済リスクの高まりを反映させた。個々の銀行の格付けについては、親会社の銀行による資金供給の状況によっては引き下げを行う可能性があることを示唆した。
フィッチは金利の低下や一部諸国の為替レートの不安定な動きが貸し手の収益性に影響するとし、「銀行への影響は景気悪化の程度とその持続期間、経済構造、為替と金利の動き、政策対応並びにコロナウイルス蔓延前までの個々の銀行の実績、リスクエクスポージャー(価格変動リスクの高い資産の割合)及び金融指標によって異なる」とした。
また、経済活動が急激に縮小していることから地域全体で企業資産の質が悪化していると指摘。中でも中小・零細企業は、収益の減少と資金不足に対応するには金融面で限界があり、脆弱だとしている。
フィッチによると、中東欧地域では銀行による不良債権の処理の動きは景気が低迷するにつれ停滞し、特にブルガリアでその問題が大きくなる可能性がある。また、新規の貸し出しの減少やリスク費用の上昇、金利低下に伴うマージンの目減りにより銀行の収益は減少するが、中でもルーマニアでその影響が大きいとの見立てだ。ただし貸し出しの伸びが小さく倒産まで至るリスクは大きくないとしている。地域全体で見ると、顧客の貯蓄が豊富にあり中央銀行による資金注入もあることから流動性不足に陥る可能性は少ないが、ルーマニアやブルガリアのように現金への依存度が高い国では引き出される預金の額が大きくなる可能性があるとの見方を示している。