ロシアのプーチン大統領は11日、新型コロナウイルス対策として3月28日から全国で実施してきた有給の一斉休業措置(「非労働日」)を12日に解除すると発表した。11日の新規感染者数が過去最高を記録し、流行収束の見通しが立たない中のロックダウン(都市封鎖)措置緩和で、経済への配慮を優先させた形だ。今後は知事が地域における感染の広がり具合を基に個々の対策をとる体制に移行する。ただし、◇65歳以上および基礎疾患のある人の外出制限◇大規模イベントの禁止◇マスク・手袋着用などの衛生措置――などは従来通りとする。
モスクワ市は12日から建設作業の再開と製造業の稼働を認める。その他については外出の許可制や食品以外を扱う小売店の営業禁止など、従来の措置を月末まで継続する。
11日に当局が発表した新型コロナの1日当たりの新規感染者数は1万1,600人を超え、その半分以上がモスクワとその近郊で確認された。全国の死亡者数は2,009人と比較的小さいが、医療関係者の見方では、よほど明確でない限り新型肺炎(Covid-19)が死因と認定されないことに理由がある。実際、モスクワの死亡者総数は4月に前年同月比で18%増加しており、新型コロナ流行の影響を示唆している。米ジョンズ・ホプキンス大学によるとロシアの合計感染者数は12日11時30分現在23万2,000人を超え、米国に次いで世界2位だ。
それでもコロナ対策を緩和するのは、景気への深刻な影響が無視できないためだ。経済活動の停止に、ロシアの稼ぎ頭である原油の相場低迷が追い打ちをかけている。中央銀行は数十億単位の外貨を放出し、通貨ルーブルを買い支えている。
これまで経済・国民への政府支援がなかったことで、大統領や政府に対する不満が支持者の中でも広まってきた。このため、大統領は11日、◇子育て世帯支援策として3~16歳の子ども1人当たり1万ルーブル(125ユーロ)を支給◇新型コロナの影響で経営難に陥った零細企業には特定の税金を免除◇医療関係者へのボーナス支給――といった措置の実施も発表した。(1RUB=1.46JPY)