楽天子会社で無料通話・メッセージアプリを提供するバイバーが、ベラルーシの首都ミンスクにある拠点を一時的に閉鎖した。中東欧ニュースサイト『bne』が23日に報じたもので、ルカシェンコ大統領による反政府集会の弾圧を受けた措置だ。同じ理由で300人を超えるIT企業の経営者がベラルーシ事業の中止を検討しており、同国の重要産業が衰退するリスクが浮上している。
バイバーのアガウワ(Agaoua)社長は、拠点閉鎖の理由の一つとして「社員2人と社員の父親1人が理由もなく逮捕され拘束された」と話した。3人とも抗議に加わっておらず、1人は他の人々が逮捕されていたところに居合わせただけで逮捕された。1人は投票立会人を務めたが、投票所の管理者に何か質問した20分後に逮捕されたという。社員の1人は釈放されたが、もう1人は怪我で入院中だ。
社長は「部外者として政治的議論に加わる意思は全くない」と断ったうえで、「権力の冷酷さと恐怖にさらされて人々が生きなければならない国には投資できない」、「国民と政府が普通に対話できるよう願っている」と話した。また、ミンスクでヤンデックスとウーバーのオフィスに武装者が侵入したことに触れ、治安悪化への懸念を明らかにした。
ベラルーシのIT産業は世界トップ級の実力を誇る。昨年は20億米ドルを稼ぎ出し、国内総生産(GDP)の10%を占めた。ある業界関係者が先ごろ語ったところでは、年30%の成長率を記録するベラルーシ経済の「宝」だ。
しかし、今回の政府による弾圧で、IT企業取締役300人以上が「状況が改善しなければベラルーシを去る」と宣言した。業界専門家が大量に流出すれば国の経済に影響が出るのは避けられない。
隣国ウクライナのミハイロ・フェドロウ副首相兼デジタル移行相はすでに、ベラルーシのIT専門家5,000人をウクライナで受け入れる方針を発表。ハルキウ市のITクラスタも、IT専門家・企業を対象に◇ハルキウへの移住・移転のノウハウ提供◇家・事務所探し◇求人情報の提供――などの支援を行うことを明らかにしている。
バイバーのミンスク拠点は同社の主要開発拠点で、120人の従業員を擁する。新型コロナのため、常に出勤しているのはこのうち20人だったという。