台湾のテクノロジー分野専門家らが政府に対し、「新南向政策」で照準を当てる東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国・南アジアよりも中東欧諸国との提携を支援するべきと訴えている。経済発展度が台湾と互角で、「パートナーとしてふさわしい」との考えからだ。チェコからの訪問団を迎えるのを機に、関係を築いてゆきたいと望んでいる。
チェコのヴィストジル上院議長は今月5日まで、90人から成る経済使節団を率いて訪台中だ。10月には2018年の大統領選に出馬したドラホシュ下院議員が科学者グループとともに台湾を訪れる。
チェコ研究開発イノベーション委員会の国際顧問を務める王鼎銘教授(国立清華大学)は、訪問団の訪台を機に「中東欧との新たな関係を模索すべき」と話す。「台湾とチェコはいずれも工業国であり、エンジニアリングやバイオ医薬品、サイバーセキュリティ、再生可能エネルギー分野が有望視されている。チェコ製品の精度の高さはドイツ軍やオーストリア軍で採用されていることでも分かるが、台湾の工業技術研究院(ITRI)のような、研究と応用の架け橋となる機関がなく、生産システムの統合は得意ではない。この点で台湾の経験をチェコに役立ててもらえるだろう」と提携の意義を説明する。
台北駐チェコ経済文化代表処・科学技術班の顔宏偉代表(東海大学教授)は、チェコ及びポーランドとの提携でカギを握る分野として「人工知能(AI)と自動運転」を挙げる。疾病予防、防衛・航空宇宙技術も有望という。同代表によると、台湾が推進中の第三次航空宇宙計画で月周回衛星に搭載される科学機器開発には、チェコとポーランドの機関の多くが関心を示している。ヴィストジル上院議長とともに訪台する科学者らはITRIを見学し、台湾国家宇宙センター(NSPO)と提携に向けた目論見書(MOU)を交わす予定だ。
ドラホシュ下院議員の訪問団の主な目的は、サイバーセキュリティ、疾病予防の両分野での意見交換で、◇台湾高速計算センター(NCHC)視察◇台湾化学工程研究所主催の会議出席◇ドラホシュ下院議員への清華大学名誉教授の称号授与――などが予定されているという。
顔代表はまた、台湾企業と中東欧諸国が新型コロナワクチン開発で提携することも目指している。欧州諸国と提携すれば、大規模な臨床試験に必要な患者の数が確保しやすいからだ。台湾は今年4月、米国に続き、チェコともワクチン研究開発の提携に向けた共同宣言を行った。欧州諸国との提携はチェコが初めてだった。
台湾総統府直轄の最高学術研究機関である中央研究院の陳建璋研究員によると、中央研究院は米国・西欧に加え、中東欧の機関とも新たな関係を築きたい意向だ。ポーランド科学アカデミーとはすでに学術交流の推進で基本合意を交わした。また、ポーランド側からは、生物多様性・気候変動研究で提携の打診が来ているという。