ロシア国立科学技術大学(MISiS)の研究者らが、新しいタイプの熱化学電池(サーモセル)を開発した。今後の研究で身体が発する熱を電気に変換できるようになり、衣料品に仕込んだウェラブル電源などに応用できそうだ。
サーモセルは周辺の環境や物体の温度差を利用して電気を作り出す技術。将来性が期待されているが、半導体熱電材料を用いた発電技術に比べ出力が小さいのがネックとなってきた。
MISiSの研究チームは今回、ニッケル中空ナノ粒子をベースとしたニッケル酸化物電極と、水性電解液を用いて、電流の増加と内部抵抗の低下を実現し、サーモセルの出力を高めることに成功した。熱電材料の性能を示すゼーベック係数が大きく、体温と気温の差でも発電できそうだという。電極温度85度以下で開回路電圧(電力が流れていない状態における電極間の電位差)は0.2ボルトと、類似のセルの10~20倍に相当する。
研究チームを率いるブルミストロフ主任研究員は、新型サーモセルは製造コストが安いため、商業利用のチャンスが十分にあるとみている。