チェコのペトル・ピトハルト元首相はこのほど、独フォルクスワーゲン(VW)グループのチェコ子会社であるシュコダ自動車が将来低価格ブランドに転換する可能性について懸念を表明した。現地通信社CNAが5日報じたもので、同氏はヤン・ヴルバ元産業相との共同書簡を政府に送り、注意を促した。
元国営のシュコダは段階的民営化で1991年にVWの出資を受け、2000年にVWの完全子会社となった。高性能ながらリーズナブルな価格の大衆車モデルで成功し、VWグループで利益率の高いブランドに成長したが、ここにきてグループ内の位置づけが再検討されている。昨年10月、VWグループのヘルベルト・ディース社長は独日刊紙『南ドイツ新聞』に対し、シュコダは「低価格モデルセグメントでの地位を強化すべき」と発言。今年8月にはシュコダを成功に導いたベルンハルト・マイヤー氏からトーマス・シェーファー氏に社長交代したが、仏ルノー傘下のダチアに競合するような低価格ブランドへの転換が目的とする憶測も浮上した。
ピトハルト氏は1990年2月~92年7月初めまでチェコスロバキア(当時)およびチェコ共和国の首相を務め、VWによるシュコダ資本参加の経緯を熟知している。チェコの市場環境の改善やドイツとの関係強化といったVWの功績を評価する一方、低価格ブランドへの転換は買収合意内容に反するものであり、シュコダ自体が打撃を受けると、政府宛て書簡で強い懸念を示した。